見えていた金メダル 松山英樹がかみ締めた“銅”の価値「単純に重たい(笑)」
◇パリ五輪 男子 最終日(4日)◇ル・ゴルフ・ナショナル(フランス)◇7174yd(パー71)
3位として臨む表彰式は新鮮だった。松山英樹は「3位で(メダルや賞状を)もらうことなんて、まずないんで。そこは正直うれしいですね」と笑う。ツアーでは優勝するか、それ以下かの戦い。3位をたたえられる感覚は、五輪でなければ味わえないかもしれない。
苦しんだ3日目のホールアウト後、居残りの調整で立て直した最終日のプレーは立ち上がりでエンジンがかかった。手前ピンの根元に突き刺した2番(パー3)でバーディ先行し、4番からは3連続バーディ。5番は右ラフ、6番は左ラフからでも2打目をピンに絡めて獲った。
3打差で入ったサンデーバックナインの勝負どころでショットが研ぎ澄まされていく。10番のウェッジショットは身体をねじってでもピン方向に飛ばす気持ちを込めたフィニッシュでバーディ。12番も同組のロリー・マキロイ(アイルランド)がベタピンにつけて大歓声を浴びる空気をものともせず、コントロールショットでスコアを伸ばした。
この日のパーオン率は圧巻の100%(18/18)を記録。タフなホールが続く終盤も、ショットが面白いようにピンへ絡んでいった。「それ(終盤が難しいの)は練習ラウンドで分かっていたこと。きょうはショットに関しては、それを克服できた」
だからこそ、再三のチャンスを仕留め切れなかったことに悔しさもある。14番(パー5)は左から土手に当てて勢いを殺す寄せで作った3mのバーディパットが左にそれ、16番(パー3)も同組のニコライ・ホイゴー(デンマーク)のラインを見て打つことができた6m強が惜しくも入らない。難度2番目の17番も左奥ピンを攻め込みながら、ひと筋右を抜けた。
17番は決めていれば、ひとつ前の組を回る首位スコッティ・シェフラー(米国)に1打差と迫る場面。表彰台の真ん中は確かに手の届くところにあった。「正直な気持ち、金メダルを獲りたかったっていうのはすごく強いですし、17番が終わるまではまだチャンスがあったと思うので」
首からさげた日本男子ゴルフ界初となるメダルの重みを問われ、「重たいです、単純に」と白い歯がこぼれた。普段ゴルフを見ない人たちでも注目する五輪だからこそ、違う価値も生まれるはず。「獲れないよりは獲れた方が価値はあると思いますし、これをきっかけにゴルフを始めてくれる子とかがいたらうれしいな、と」。メダリストとなった喜びをかみ締めた。(フランス・ギュイヤンクール/亀山泰宏)