ザンダー・シャウフェレ メジャー史上初2度目「62」の“舞台裏”
◇メジャー第2戦◇全米プロゴルフ選手権 初日(16日)◇バルハラGC(ケンタッキー州)◇7609yd(パー71)
前週「ウェルズファーゴ選手権」で、ロリー・マキロイ(北アイルランド)との最終日最終組の一騎打ちに敗れたザンダー・シャウフェレ。翌週メジャーの舞台でうっ憤を晴らすかのようなゴルフをみせた。
前半で4つのバーディを重ね、後半はさらに5つのバーディ、終わってみれば9バーディ、ノーボギーの「62」。2位に3打差をつける圧巻のプレーで、単独首位発進を決めた。大会最少スコアを更新する「62」。自身が昨年「全米オープン」初日に記録したメジャー最少ストロークに並ぶとともに、メジャーで「62」を2度マークした初めての選手となった。
それにしても、今季のシャウフェレは、ずっと好調だ。優勝こそないものの、ダブルス戦の「チューリッヒクラシック」を除く出場11試合でトップ10フィニッシュが8回。そのうち「ジェネシス招待」や「プレーヤーズ選手権」など、ビッグイベントで優勝争いに絡むことも多数(もちろん前週も)。ホールアウト後には「キャリアの中でいまベストなゴルフではないか?」という記者の質問に対し、「非常にそれに近いと思う」とキッパリ。プロゴルファーがここまで言うのは、あまり聞いたことがない。
スコア貢献度を示すストロークゲインドを見ると、オフ・ザ・ティ(パー4とパー5でのティショット)が8位、アプローチ・トゥ・グリーン(グリーンを狙うショット)が7位。ショットが好調ぶりをけん引していることが分かる。前週も手応えをにじませていた、昨年から取り組んできたスイングと体の改造が、ここにきてハマっているのは間違いない。上半身の筋肉量を中心に体重が3、4kg増え、飛距離アップに成功。この日一緒に回ったジャスティン・トーマスが驚いたというほど、明らかに飛ぶようになっているのだ。
昨年11月から、タイガー・ウッズの元コーチであるクリス・コモ氏に師事し、スイングの安定感が増したことも大きい。マキロイに敗れた翌日の今週月曜日には、2人がバルハラの練習場でセッションを行っている光景を目撃した。まだ戦いの余韻が冷めやらぬホットなうちにスイングの修正を施している様子だった。
練習後のコモ氏に話を聞くと、「我々は“ベタードライビング”を目指しているんだ。ドライバーのドローボールをもっと安定させたい。もうちょっと高さが欲しいし、ヘッドスピードも欲しい。やっぱりまだフェードになりやすくて、もっと楽にドローが打てるようにしたいんだよ。今はそこが課題なのさ」と説明。続けて具体的なレッスン内容に言及し、「バックスイングはほとんど変えたよ。フェースローテーションの量を増やして、レイドオフの度合いを減らしたんだ。ほとんどオンプレーンだけど、今はほんのちょっとだけシャフトクロスになっているかな」。選手が悩みそうな敗戦直後のタイミングで、すぐにコーチが手を差し伸べるあたりが、ビッグスコアの要因にもなっているのだろう。
「今日の自分のプレーには満足しているけど、ひとつひとつ見ればもっとうまく打てたんじゃないかというショットもアプローチもいっぱいある。今は練習に行きたくてウズウズしているよ。とってもいいスタートが切れたけど、まだ木曜日だからね」。本人も前週のリベンジへ静かに闘志を燃やしていた。(ケンタッキー州ルイビル/服部謙二郎)