最後に“破った”父の教え 小平智が米国で誓う親孝行
◇米国男子◇ファーマーズインシュランスオープン 事前(23日)◇トリーパインズGC (カリフォルニア州)◇ サウスコース(7765yd、パー72)、ノースコース(7258yd、パー72)
小平智は、2週前の「ソニーオープンinハワイ」で待機選手からフィールド入りして2023年の自身初戦を迎えるはずだった。しかし、そうはならなかった。闘病中だった父・健一さんの容態が急変。8日に帰らぬ人となり、12日の開幕を待たずして日本へ引き返した。
日本時間6日の夜に渡米するまで、年末年始はなるべく長く父と一緒に過ごした。「『2カ月くらいで(一時帰国のため)帰ってくるから、それまで元気で』と言って、ハワイに飛んだ。体調は良くなかったですけど、そんなにすぐ(急変する)という感じではなかった」と明かす。
元レッスンプロの健一さんはゴルフの師であり、人生の師でもある。「“自分(親)が死んでも試合には出なさい”というタイプ。(天国の父に)メチャクチャ怒られると思ったけど、(残された)母が心配だった」と帰国は迷わなかった。「心にぽっかり穴が開いちゃった感じ」。簡単に悲しみは癒えないが、葬儀の喪主も務めて「ちゃんと送り出せた」ことがせめてもの救いだった。
前週「ザ・アメリカンエキスプレス」は、ぶっつけ本番に近い状態で出場して予選落ち。トレーニングによって徐々に体が動くようになってきた感覚もある中で迎える試合は、特別な思いを抱く舞台でもある。このトリーパインズGCは1打届かなかった2021年を含め、過去3度の出場で予選通過がなく、「世界で一番難しい」と位置付けるコースだ。ツアー屈指の長さに加え、今年は左右のラフもメジャーをほうふつとさせるハードセッティングだが「予選を通りたいコースとして、自分の中でナンバーワン」と気合がみなぎる。
「母親を大事にしないといけない。僕ができる親孝行といったら、ゴルフしかない。頑張っている姿を見せて元気づけたい」。あふれる思いをプレーにぶつける。(カリフォルニア州ラ・ホヤ/亀山泰宏)