2022年 ザ・メモリアルトーナメント

メモリアルの歴史とともに 75歳の女性がニクラスに捧げた47年

2022/06/03 14:58
47年ボランティアに参加し続けるエベレットさん(右)

◇米国男子◇ザ・メモリアルトーナメント 初日(1日)◇ミュアフィールドビレッジGC(オハイオ州)◇7543yd(パー72)

十数年前よりヒザが上がらなくなったのを感じながら、今年も長い階段をゆっくり上る。18番グリーン脇の大きなリーダーボードは、オハイオ在住の75歳、シェア・エベレットさんの定位置だ。

エベレットさんがメモリアルのボランティアを始めて、今年で47回目。第1回大会から毎年欠かさず参加している。「ニクラスがはじめてホスト大会で勝つのも、タイガーの5回の優勝も見てきた。まだニクラスがフィールドでプレーしていたのが懐かしい」。

1976年、地元出身のジャック・ニクラスが開設した新規大会のボランティア募集を目にして、迷わず応募した。家族ぐるみでゴルフファンということもあるが、今となっては一番の理由は恩返し。「姪がチルドレンズ・ホスピタルで助けてもらったんです」。大会が始まる7年前、エベレットさんの4歳の姪が全国小児病棟(チルドレンズ・ホスピタル)で長期の火傷治療を受けていた。メモリアルの収益の多くは、ニクラスの意向でこの病院のサポートに充てられている。「小さなことだけど、感謝の気持ちを表せると思った」と、毎年ミュアフィールドビレッジで1週間を過ごすことが習慣になった。

小児病棟の子供がプロアマを観戦した

メモリアルのボランティアは、毎年総勢3000人以上のボランティアが支えている。地元の住人、遠方から来るゴルフファンだけでなく、チャリティへの恩返しとして参加する人も多い。初回大会から参加し続けている人も、エベレットさんだけではないという。

「本業の管理アシスタントの仕事は、もう定年しました。でも身体が動く限りボランティアは続けるつもり」と、今年も18番のスコアボードに続く22段の階段をせっせと上る。『マスターズのように世界からの関心を集め、歴史と伝統ある大会を作りたい』。そのニクラスの思いはしっかりと根付いていた。(オハイオ州ダブリン/谷口愛純)

2022年 ザ・メモリアルトーナメント