イ・キョンフンは9年前の「宣言」を実現 日本ツアーから夢かなえる

◇米国男子◇AT＆Tバイロン・ネルソン 最終日（16日）◇TPCクレイグランチ (テキサス州)◇7468yd（パー72）

20㎝のウィニングパットの直前、大雨の上がったコースは日を浴びて輝いた。イ・キョンフン（李京勲／韓国）は夢に見ていたPGAツアー初優勝のシーンでガッツポーズを作ったり、エキサイトしたりする姿を思い浮かべていたが、「ぜんぶ忘れてしまっていた」。静かにキャップを取って笑顔で歓声に応え、2カ月後に出産を控えた妻と抱き合った。

2位から同じ組のサム・バーンズを1打差で追いかけ、2番からの3連続バーディで一気に前に出た。後続に十分なリードを持って残り3ホールというところで、大雨による2時間23分の中断。その間も「プレッシャーがかからないよう、リーダーボードを見ない」という誓いに徹した。

非の打ちどころがない「66」で、終わってみれば後続に3打差をつける通算25アンダー。2013年にベ・サンムン、昨年カン・スンが初優勝を遂げた大会で同じ韓国の先輩に続いた。

1991年8月生まれは松山英樹、石川遼らと同学年。13歳で始めたゴルフは最初「痩せるため」だった。体重は16歳のときに96kgあったという。2010年の「アジア大会」で団体戦の金メダルを獲得。前年末の最終予選会をトップ通過して参戦した12年の日本ツアー「セガサミーカップ」を制した。当時の会見で「夢はPGAツアー優勝」と宣言した通り、15年に日本で2勝目を挙げるなり、海を渡った。

言葉に責任を持った行動で米下部ツアーに挑戦。3シーズンを過ごしてから2019年にPGAツアーのフルシードを獲得した。ブルックス・ケプカの肉体作りに触発され、トレーナーを雇ってパワーアップを図ったのは同年のこと。今年2月の「ウェイストマネジメントフェニックスオープン」では、そのケプカに1打差の2位で終えた。ひたむきに階段を一歩ずつ上り、この日を迎えた。

3番目の待機選手となっていた次週のメジャー「全米プロゴルフ選手権」（サウスカロライナ州キアワアイランド）に滑り込み。韓国籍の選手で史上8人目のツアー優勝者として、もっと大きな未来が待っている。（テキサス州マッキニー／桂川洋一）