2021年 WGCワークデイ選手権

届かなかった赤いシャツ せめてモリカワは「タイガーみたいに」逃げ切った

2021/03/01 17:30
終わってみれば3打差圧勝。モリカワは”タイガーばり”の逃げ切りを見せた(Ben Jared/PGA TOUR via Getty Images)

◇世界選手権シリーズ◇WGCワークデイ選手権 最終日(28日)◇ザ・コンセッションGC (フロリダ州)◇7474yd(パー72)

タイガー・ウッズの自動車事故の報を受けて、フィールドの一部の選手たちが上下、赤と黒の“タイガー・コーディネート”で最終日のコースに飛び出した。コリン・モリカワもそのつもりだった。契約するアディダス社からこの日のために郵送された赤いシャツ。だが、実際に着用したのはグレーのポロだった。

「悪天候で、メンフィスで止まってしまったんだ。追跡番号を昨日も今朝もチェックしたんだけど。何人かの選手が赤を着ていて、僕も着たいと思った。この黒いパンツと合わせたら最高だろう? そうしたら、僕のエージェントが言ったんだ。『じゃあ、タイガーみたいにプレーしろ』って」

メジャー通算15勝のうち直近の2019年「マスターズ」を除いて、すべて最終日の逃げ切りで優勝してきたウッズは、追いすがるライバルたちを突き放すプレーが真骨頂だった。モリカワは前日までに築いた2打差を一時、ビリー・ホーシェルらに詰められながら、中盤に加速。11番(パー3)で4mのパーパットをねじ込み、終盤の安全運転につなげた。

昨年8月にツアー3勝目を「全米プロ」でのメジャータイトルで飾ってからは不振続き。原因はグリーン上にあった。「正直言って、僕はいつもパットを気にかけている」。復調のきっかけは数週前、ラスベガスの自宅近くのコースで、マーク・オメーラのように右手の親指と他の指でグリップを挟むような握り方、 “ソー”グリップにトライしたこと。「感じたことがないほど良い感触」を得て、翌日、当地でオメーラに実際に話を聞くこともできたという。

弱点が克服され、終わってみれば通算18アンダー。2位の3人に3打差をつける圧勝に「ここがいかにすごいフィールドで、いかに自分が良いゴルフをできたと感じられたか。混戦のリーダーボードで勝てたのは本当に意味のあることだ」と胸を張った。

「タイガーは僕にとって全てを意味する」というモリカワが初めてウッズと対面したのは2019年10月、日本での「ZOZOチャンピオンシップ」だった。「ロッカールームで20秒くらい、あいさつした」。それから、同じテーラーメイドの契約選手として撮影の機会で一緒になることも増えたところだった。

「事故でも、ありがたいことに彼は生きている。早く良くなって戻ってきてほしい。でも、彼には感謝しきれない。本当にありがとうとタイガーに言いたい。人はときにあまりにも早く亡くなってしまう。コービー(ブライアント)や…、僕は1カ月前に祖父(トシオさん)を亡くした。もう、十分にありがとうと伝えられないんだ」。24歳。モリカワはメジャーとWGCのタイトルを25歳以下で獲った、ウッズ以来2人目の選手になった。(フロリダ州ブラデントン/桂川洋一)

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