チーピン打ったら加→米 国境をまたぐゴルフ場/海外ゴルフ回顧録
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、各国で大規模イベントが中止や延期に追い込まれた2020年。プロゴルフも例外ではなく、選手たちの熱戦を見られない期間が続いています。自粛ムードが漂うなかではありますが、再開のときが来ることを信じ、ゴルフカメラマンの厳選写真で世界のゴルフに思いを馳せます。(JJ田辺カメラマン)
パスポート持参、時差、課税もありうる珍コース
米国でもっとも北東に位置するメイン州と、カナダの南東ニューブランズウィック州を隔てる国境線上にあるアルーストックバレーCC。駐車場とクラブやボールを販売しているプロショップは米国領に、クラブハウスと18ホールのコースはカナダにあるのです(実際はカナダのゴルフ場として登録されている)。
少々、ややこしい話になります。当地には車で入場しますが、カナダからのお客さんの場合は駐車場のある米国に入国するため、その前に国境警備にパスポートを提示する必要があります(パスポートに準ずるIDカードを持っている人もいる)。プレーヤーはプロショップ(米国)でスタート時刻を確認・予約しますが、両地域には1時間の時差(カナダが午前8時のときは米国は午前7時)があるため要注意。そしてパスポート(ID)を必ず持参してコース(カナダ)に向かいます。
1番ホールは南北に走る国境を左サイドに意識しながらティショット。チーピンで左に曲げてしまうと、ボールはカナダから米国に飛び込んでしまいます。携帯電話サービスが進化した昨今では心配は減りましたが、数年前までは国境線沿いを移動していると、いつの間にか通信電波が変わり、国際ローミングになって高額請求が届く…というハプニングもあったとか。ちなみにカナダ人がプロショップ(米国)でクラブセットなどの高額商品を購入した場合、自宅に持ち帰ると免税範囲を超える可能性があるため、ショップ内には注意書きがあります。
当地は長年、両国の友好の証としてゴルファーに親しまれてきましたが、2001年9月11日の同時多発テロの直後は周辺警備が途端に厳しくなり、10数年前までは国境沿いにフェンスがありました。コースの経営にも打撃が出たそうです。辺りの住民は“一本道を隔てたお向かいさん”の家に足を運ぶのも、簡単ではない時期でした。寒さの厳しいこの地域のゴルフ場は毎年5月以降にオープンします。新型コロナウイルスの感染拡大は、普段はのどかな田舎町にどんな影響を及ぼすでしょうか。
田邉安啓(JJ)
福井県出身。ニューヨークを拠点にゴルフカメラマンとして活動する。1991年に渡米し、大学卒業後の96年から米国のゴルフ場で勤務した。98年からゴルフカメラマンとして、PGAツアーやLPGAツアーを撮影。現在は年間30試合以上を取材。