グリーンジャケットから1年4カ月 リードを立ち直らせた10日間
◇米国男子◇ザ・ノーザントラスト 最終日(11日)◇リバティーナショナルGC(ニュージャージー州)◇7370yd(パー71)
長いトンネルを抜けた。パトリック・リードが2018年の「マスターズ」以来となる勝利をポストシーズンに手にした。ことしに入って6月末まで一度もトップ10入りがなかった低迷期を乗り越え、ツアー通算7勝目。フェデックスカップポイントランキングは50位から2位にジャンプアップし、年間王者のタイトルと1500万ドル(約16億円)のボーナスに向けて前進した。
単独首位からの鈍い滑り出しは、キャディのアドバイスをきっかけに一転させた。前半7番までに2バーディ、3ボギーとスコアを落としたところで、相棒から「7ホールで2回しかパーオンしていない。でもその2ホールはどちらもバーディ。グリーンをとらえていればOKだ」と声が飛んだ。
アグレッシブになりすぎず淡々とプレーすると、その後はバーディを3つ重ね、ボギーはひとつもなし。一時はジョン・ラーム(スペイン)にさらわれたトップの座を奪い返した。
グリーンジャケットを羽織ってから、タイトルがなかった1年4カ月を「ちょっと長かった」と振り返る。メジャー初制覇のあとも鍛錬を重ねてきたが、なかなか結果に結びつかなかった。
ひとつの転機になったのは予選落ちした5月「全米プロ」の直後にあった。「懸命に努力してきたつもりだったから、体も心も消耗した。間違った方向に進んでいたから、休みが必要だと思った」。3週間のオフをとり、最初の10日間はクラブを握らなかったという。
子どもと遊び、夫人のお出かけでリフレッシュ。そのあとようやく練習を再開すると、ボールがより遠くに飛んだ。「突然、何をすべきか鮮明になったんだ」。6月末の「ロケットモーゲージ・クラシック」で5位に入ってからは、一度もトップ25を外すことなくレギュラーシーズンを終えた。
「そんなに休んだことはあるかって? 僕がこの世に生まれた1990年以来だね(笑)。正直言って7日も休んだことも、それだけゴルフクラブを握らなかったことも思い出せない」。勝負のかかる最終日に赤やピンクのウエアを着る習慣は未勝利の間にやめた。青いシャツで手にした新しい1勝だ。(ニュージャージー州ジャージーシティ/桂川洋一)