2026年 AIG女子オープン(全英女子)

父との絆、15キロ減量、ギャン泣きの敗戦…桑木志帆が世界一になるまで

2026年 AIG女子オープン(全英女子) 最終日 桑木志帆
プロ6年目でメジャーの頂点に輝いた桑木志帆

◇女子メジャー最終戦◇AIG女子オープン(全英女子) 最終日(2日)◇ロイヤルリザム&セントアンズGC (イングランド)◇6601yd(パー71)

プロ6年目の桑木志帆がメジャー通算8試合目の挑戦で初優勝を飾った。昨年「AIG女子オープン」での山下美夢有に続き日本勢7人目の世界一に輝いた、23歳の歩みをひも解く。

◇◇◇◇◇

桑木の原点には、父・正利さんとの二人三脚がある。父に連れられ訪れた練習場で、4歳で初めてクラブを握った。始めたばかりなのに空振りが少なく、正利さんは早くも才能の片りんを感じたという。一般家庭にとって、ゴルフは決してお金のかからない競技ではない。「プロになる」という夢を掲げて突き進む父娘を、母・浩子さんは時に心配し、反対したこともあった。桑木はそれでも迷うことなく夢を追い続けた。自身を「熱しやすく冷めやすいタイプ」と分析する。しかし、毎年伸びる飛距離に魅了され、ゴルフへの情熱は冷めることがなかった。父の指導が厳しく、嫌になった時期もあったが、「絶対にプロになって優勝する」という思いは揺らがなかった。

その父との絆を象徴する出来事が、2023年夏に正利さんが脳梗塞で倒れた時のことだった。それまで毎試合18ホールを歩き、一打一打をノートにメモして共有することを日課にしていた。体への負担を考え、「もう来なくていい」と気遣っても、父はコースに足を運び続けた。今季から自らコース管理アプリに全ての打球を入力し、データを分析している。形は変わっても、二人でコースに立ち向かう姿勢は変わらない。

アパレル契約を交わすラウドマウスの鮮やかなウェアに、大ファンであるラッパー「LANA」を意識したメイクもプロとしての個性だ。2023年、体形を揶揄する心ない書き込みがSNSに寄せられたこともあった。自身のX(旧Twitter)で「ふつーに傷つきます笑笑。そして本人が1番危機感感じてます…爆笑」(原文ママ)などとユーモア交じえて受け流した。ただ、「ヒザや腰も痛くてウェアもはちきれそうだった。さすがにやばい」と日本ツアーで初優勝から3勝を挙げた2024年シーズン後に一念発起。揚げ物やお菓子を断ち、カフェオレもブラックコーヒーに変えた。約1年をかけて15キロの減量に成功。軽くなった体はスイングのキレを生み、終盤でも落ちないスタミナにつながった。華やかな姿の裏には、そんな芯の強さがある。

2024年に初めてロサンゼルスで合宿を行った。メジャーリーグ・ドジャースの大谷翔平投手のファンで、渡米前は「会えるかな…」と胸を躍らせていた。現地で練習を重ね、PGAツアーを観戦した。練習環境、世界トップ選手のプレー、現地の空気。そのすべてが、海外で戦うという夢を「憧れ」から「目標」へと変えた。しかし、翌2025年にメジャー初出場した「全米女子オープン」は56位、「全米女子プロ選手権」と「AIG全英女子オープン」は予選落ち。特にカットラインに1打届かなかった全米女子プロでは、ホールアウト直後から帰りの車中まで「ギャン泣きでしたね」と悔し涙が止まらなかった。それでもやっぱり、夢を諦めなかった。

「広い海に帆を広げ、志を持ってこぎ出すように」――。そんな願いを込めて「志帆」と名付けられた23歳が、メジャーという世界最高峰の舞台で頂点に立った。(編集部/中村文香)

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