2009年 〜全英への道〜ミズノオープンよみうりクラシック

ツアープレーヤーたちのウソ!?<久保谷健一>

2009/07/20 10:19

ツアープレーヤーたちのウソ!?<久保谷健一>

腰の痛みに耐えかねて、「ミズノオープンよみうりクラシック」のホールアウト後はグリーンサイドにちんまり正座。爆弾を抱えている上に、「ゴルフの内容も、とてもみなさんにお見せ出来るものではない」とボヤキながらも、やっぱりメジャーで大活躍するこの選手っていったい!?

報道陣から取材を受けてもこの人の場合、インタビューというよりまるで“ボヤキ”だ。「全英オープン」の出場権がかかった先の「ミズノオープンよみうりクラシック」でもそうだった。大会2日目。どこか遠い目をしてつぶやく。「僕のゴルフは昨日からまったく進歩がない。今日だって予選通過することで精一杯の状況なんです」と、憂鬱そうに視線を落として「やってても苦しいだけで…。ほんとうに嫌になります」。

聞けば5月の「三菱ダイヤモンドカップ」で持病の腰痛が再発したという。そのあと、患部をかばってスイングしているうちに、変なクセがついてしまった。それをどうにか克服しようと試みているが上手くいかない。「まったく、どうして僕ってこうなのか? おまけに、今週になってますます腰が痛くなってきて、良いことなんかひとつもない。全英オープン? まさか(と、自嘲の笑みで)、今はパーを取るのも必死なのに、とてもそれどころじゃない。いまの僕がイギリスなんか行っても、無駄にお金がかかるだけですよ…」。

最後の方は、ほとんど一人語りで延々とボヤキ続けていた久保谷に、通りがかりの横尾要がちゃちゃを入れた。「この人の言うこと、信用しないほうがいいですよ。ウソつくから。調子悪い悪いと言いながら、いつもちゃんと上にいるから」。

「何言ってんだよ、要。俺は今ほんとうに調子が悪いんだってば」と、ムキになって言い返しても説得力ゼロ。だってその日の順位は6位タイ。「久保谷さんこそ、何言ってんスかその成績で」と、あきれ顔で去っていく横尾の背中に「ホントに調子悪いんだってば」と、なお懸命に訴えていた久保谷だが、いよいよ迎えた最終日。横尾の証言が真実であったことがあっけなく証明された。最終ホールでバーディを決めて、3位タイで自身2度目のメジャー切符を手に入れたのだ。

横尾の言うとおり、この人はいつも「調子が悪い」と言いながら上位に来る。過去4勝もそうだった。この人が自信満々で勝った試合はひとつもなかったといって良く、常に「僕なんかがどうして……」と、首をかしげながら優勝カップを受け取った。それは謙遜とも違っていて、いつも本人が真剣に悩んでいるのは本当で、「なんでこんな自分が勝てたのか」としきりに言い募るのだが、それでもちゃんと結果が出てしまうから、言葉の信憑性に欠けるのだ。

2003年に初挑戦した米ツアーから帰国後はしばらくスランプに陥ったが2006年頃から、再び上向きに。賞金ランクは11位につけた昨シーズンは去年の今頃から現在に至るまで、いまだ予選落ちなし。昨年8月の「サン・クロレラ クラシック」から21試合連続の決勝ラウンド進出(棄権1)については本人も意識しており、「悪いながらも、せめてその記録が切れないようにとやっているから、どうにかなっているだけでしょう」と、なぜか好調の要因も言い訳するみたいに挙げるのだ。

しかし、深刻な腰痛もまた本当で、「ミズノ~」の最終日はカップインしたボールすら自分の手で拾えなかった。ホールアウトしてすぐに苦しそうに患部を押さえ、グリーンサイドに正座してしまったほどだ。2002年のミュアフィールド以来の出場権も、ちっとも嬉しそうではなく「出来ることなら他の希望者に譲りたい」と顔をしかめ、全英の週は長男・天祐くん(9)のサマースクールに付き添って「僕はハワイに行こうと思います」とまで言っていたのだ。

しかし他でもない、「お父さんとイギリスに行きたい」との愛息のたっての願いではるばる会場のターンベリーに乗り込んだ久保谷は、初日になんと5アンダーを記録して首位と1打差の2位タイ。2日目には4位タイの大健闘……!!

しかし、それでもなお、この人はこう言うのだ。「今季、一番ひどいゴルフの内容です」と。徹底したマイナス思考はむやみに意気込まないから良いのか? はたまた、ボヤいているときほど本領を発揮するのか? 本人のコメントと、実際の結果との大きなギャップも真相は闇の中。でもそういえば、前回の初挑戦でもさんざん自分をけなし、ボヤキながらもしっかりと、決勝ラウンドには進んでたっけ……。

2009年 〜全英への道〜ミズノオープンよみうりクラシック