名俳優と同姓同名のプロゴルファーの苦闘とは・・・
ゴルフファンのみなさんなら、覚えてくださっている方もいるだろう。昨年、日本ツアーでデビューを飾った。登録名のわたり哲也は、本名を「和足」と書く。漢字は違えど、あの名優、渡哲也さんと同姓同名の選手ということで、いたく話題になった。
ましてまさにデビュー戦となった昨年の開幕戦では17位と上々の滑り出しに、188センチの長身と気さくで軽妙なキャラクターも相まって、一気に期待を集めた選手である。
2006年に留学先のオーストラリアでプロ転向を果たし、稼ぎのない時代は時給680円のフィットネスクラブで食いつなぎ、昨年はファイナルQTランク8位の資格でようやく表舞台に出てきた。名前のインパクトも相まって、いくつかスポンサーもついて、メーカーとクラブ契約も結んだ。「さあ、これから」と言うときに躓いた。昨年5月の日本プロだ。予選2日間で、いまをときめく18歳、石川遼とのプレー。いきなり、これまで経験したことのない大ギャラリーを前にして「欲が出た」。良いプレーで、一気に名前を売りたいとの思いが逆にプレッシャーとなったのか。そのあとから予選通過はおろか「100位台をうろうろするのが精一杯」。すっかり調子を崩してしまったのである。
自信も回復出来ぬままに1年はあっという間に過ぎた。念願の初シードはおろか、起死回生のチャンスもふいにした。翌年の出場権をかけたQTは、最終ステージのひとつ前の3次で失敗。と、同時に潮が引くように、人々は周囲から去っていった。今のご時世、試合に出られない選手の面倒を見続けてくれる企業はまあいない。本人も重々承知で、それでも「一度、上を見てしまったら、今の状況は余計につらい」と、なおさら身に堪える。
出身地の「テレビ熊本」はスポンサー契約を継続してくれたが「地元を一緒に盛り上げて行きましょう、というのが始まりだっただけに、こうなったからといって経費の面で無理は言えない」と、堪え忍ぶ毎日だ。
某ウェアメーカーに、厚意で30%の割引券をお裾分けしてもらっているが「それでも新品の服を買うには勇気がいります」と、お古を着回す。某ゴルフ量販店の名をあげて「クラブもそこで買っています」。今は千葉県のゴルフ場で「バック運びをしている」と、どうにか食いつなぎながら、まさに綱わたりの心境で暮らす毎日だ。
残酷なほど、弱肉強食な勝負の世界。主催者推薦を受けて、今季3戦目となった「トーシンゴルフトーナメント イン レイクウッド」の会場で、しみじみとつぶやく。「たくさんの方に支援していただけるような成績を出さなければ!!」。
ゴルフを愛してやまない28歳は、今後のゴルフ界も案じる。「今こそ一丸となって、もっとツアーを盛り上げていくべき」との思いは人一倍だが、「それも成績を出さないことには意見も言えない」と、痛感している。ゴルフ界さえ引っ張っていけるような大活躍を夢見て・・・・・・。男・わたりがどん底から這い上がろうと懸命だ。