ツアープレーヤーたちの縁<横尾要>
先月末、宮崎のフェニックスカントリークラブで冬期合宿をスタートさせた片山晋呉がふとアプローチの手を止めて、不思議そうにつぶやいた。「そういえば要は・・・誰と来たんだろう?」。
毎年、飛球線方向側の練習場奧が片山の“指定席”だ。合宿初日。いつもの場所に向かって歩き出した片山が、ばったり出くわしたのが横尾要だった。聞けば横尾も前日夜に、宮崎入りしたという。しかし、それほど込み入った話もせずに別れた。
片山の疑問に「一人で来たらしいですよ」とマネージャーが答えると、「へえっほんとに? 一人で回るつもりなのかなあ?」と、目を丸くしていたものだ。
確かに一人で来たが、横尾にはちゃんと目的があった。ちょうど翌日からひいきの球団、読売巨人軍恒例の宮崎キャンプが始まるというときだった。「混じらせてもらおうかな、と・・・」。
プロ野球選手のトレーニングは並外れてハードだが、あえてそこに身を置き体を鍛え直そうという計画があったようだ。
小学生のころ、実家の東京都豊島区要町のチーム『要町ホープス』でファーストを守った野球少年は、今でも無類の野球好きである。ある大会のスタートコールで「ゴルフクラブより、野球のグローブのコレクションのほうが多い」とアナウンサーに紹介されて、「なんで知ってるんだろう?」と本人は苦笑いで首をかしげたものの、否定はしなかった。
実際のところ、ファンも垂涎の“お宝”を多く所有している。「どのグローブが一番大切かって?そんなの言えない。どれも一流選手からのいただきもので、すごく大切」と、打ち明けたものだ。
また昨年、日本シリーズをかけたクライマックスシリーズと日程が重なったブリヂストンオープンで、2日目に2位につけて報道陣に囲まれた際も、自分のプレーはそっちのけで前夜のナイターの話に終始。
夢中で語ったあとに、ふと我に返って「あれっ、ゴルフの話がひとつもなかったね」と、照れ笑いを浮かべていた。それだけに、敬愛する原辰徳監督のキャンプに合流することは、何よりの刺激となったに違いない。
片山がトレーニングに汗を流すちょうど対面で、打ち込み練習に励んでいた横尾は、ちらりとそちらのほうに目をやって「シンゴは順調?」と、同級生を気にかけるそぶりを見せた。
ジュニア時代からしのぎを削ってきた仲で、日大時代は宮本勝昌と併せて「3強」と呼ばれたが、昨年2年ぶり5度目の賞金王に輝いた片山には、今や大きく水を開けられているといってもいい。「僕はといえば、うだつがあがらないから・・・。なんとか今年は優勝したい」と、豊富を語った横尾は最後にポツリと、「シンゴにおめでとうって伝えておいて」。
その日は、ちょうど片山の36回目の誕生日だった。
「さっき会ったとき、うっかり言うの忘れたからさあ・・・」と少し照れくさそうに言いながらも、友人の記念日を忘れていないあたりに長く、同じ世界でトップに立ち続ける彼らの切っても切れない縁を感じさせた。