ツアープレーヤーたちの改心<近藤共弘>
まったく別の選手だと、思われた方もいるかもしれない。昨年までの表記は近藤智弘。今年から、共弘と変更して戦うことを決めた。見慣れない字に違和感を覚える方も少なくないようで、「どうしちゃったの」と聞かれたり、新聞報道などを見て「漢字が間違えていたよ」と、わざわざ知らせてくれる人がいたり……。本人にとってはそれほど大袈裟なことでもなかっただけに、逆に周囲の反響の大きさに驚いてしまったという。
きっかけは昨年末。かねてより親交のあった直居由美里(なおいゆみり)さんは、あの藤原紀香さんも信頼をおくという風水建築デザイナーで、近藤も機会あるごとに相談に乗ってもらってきた。今回も1年の成績などを報告をする中で、「名前の漢字を変えてみたらどうでしょう」という提案があり、近藤は迷わずその場で「では、良い字を選んでください」と、お願いしたという。
昨年は4月の「中日クラウンズ」でツアー通算4勝目を挙げたとは言うものの、原因不明の足底痛で数試合を棒に振った。悪いことばかりではなかったとはいえ、大いに悔いは残った。何より、いっこうに去らない足の痛みに、「名前でもなんでも、とにかく変えることで今より良い方に向いていくならば、なんでもやってやろうと思ったんです」と、近藤はいう。もちろん、名前を変えただけで症状が良くなるわけではなく、このオフは十分な調整も出来なかったがそれでも明るい材料はあった。
3月末に行われた「全英オープン」のアジア予選。権利の与えられる上位4人の最後の一席を争って、9人によるプレーオフまで持ち込んだ。昨年に引き続いて、あと一歩のところで権利を逃したことは悔しいが、さしたる練習も出来なかったわりには2日間、納得のいくゴルフが出来たことで自信もついた。「それも、改名の効果かな」。ジャパンゴルフツアー開幕戦「東建ホームメイトカップ」では、パッと明るい蛍光イエローのボールを使うなど、なんでも貪欲に取り入れて懸命に前を向こうとしている。
いよいよツアーも開幕を迎え、「僕らの世代が引っ張っていかなければ」という自覚もある。「とにかく、今年はひとつ階段を上がりたいんです。生まれ変わって、そのときの調子や状態に左右されない真の実力を手に入れたい。そのための努力は、惜しまないつもりです」。デビューから10年目。今年32歳。いよいよゴルフの円熟期を迎えるトッププロの突然の改名は、そんな強い思いの表れだった。