アマ・その他ツアー

ツアープレーヤーたちの恐怖体験<井手口正一>

2007/02/26 00:49
これが、シーズン中には宿代わりにもなる愛車エルグランド。「7年間で、総走行距離は約24万キロ。改造や修理を重ねて、年季が入ってますよ!」と井手口。

2005年度のチャレンジトーナメントランク1位の資格から、今季初シード入りに成功した井手口正一は、あの、横峯さくらよりも“年季”が入っている。ジュニア時代は、認定プロでもある父・一幸さんの運転で、99年のデビュー後は自らハンドルを握り、愛車のワゴン車で寝泊りしながら全国各地を転戦している。

風呂は温泉やスーパー銭湯を活用。各地の道の駅に車を停めて夜を明かす。長年そんな生活を送っているから当然、珍騒動に巻き込まれる率も高い。

昨年10月のことだ。この日は、開催コース近くのコンビニの駐車場を“宿”に決めて、買い物を済ませて店から出てくると、ひとつスペースを空けた右隣にちょっと不審な車両が止まっていた。チラっと覗き見た車内はあきらかに、浮浪生活をしている人のそれで、中はそれらしい雑貨で溢れている。山積みの荷物の中で、運転手のおじさんはサイドボードにもたれかかってじっと目を閉じていた。

「はあ~、気持ち良さそうに寝ているなあ」と、暢気に思いながら井手口も自分の車に戻って、そのまま夜を迎えたのだが・・・

と、深夜に無線の騒々しい音がする。「何事!」と思って飛び起きると、赤色等がクルクルと回っている。慌てて外に出ると、パトカーと救急車が停まり、先の車の周りを警官が3人ほど取り囲んでいた。

「何かあったんですか?!」と恐る恐るたずねると、仰天の答えが返ってきた。「このおじさん、死んでるみたいなんだよ」。「ええっ・・・!?」。

夕方、寝ていると思った人は、実はそのときにはすでに、息絶えていたのではないか、というのだ。何時ごろからここにいるのか、とか駐車の目的とか職業とか、井手口も簡単な職務質問を受けて、「事件性はないと思うが、後日いろいろ聞かなくてはならないかもしれないから」と、最後に電話番号を聞かれて解放された。

さすがに、そのままそこに居座る気にもなれず“寝床”を変えたが、それにしても背筋の凍る体験をしたものだ。そのあと結局、警察から電話はなかったので、あの人はきっと車で転々とするうちに、行き倒れてしまったのだろう。本当にお気の毒なことだった。

ところで、久しぶりに家に帰ってこのハプニングを話した井手口は、家族に大いに呆れられた。ひとつ下の妹の真理さんいわく、「なんで、兄ちゃんはその人の顔まで見ておいて、亡くなっていることに気がつかないのかなあ・・・」。これには、さすがに普段温厚な井手口も必死に主張した。

「いや、絶対にあの表情は誰が見ても寝てると思うよ!! ほんとうに気持ち良さそうだったんだから・・・!!」。懸命に言い募ったが、実際に見ているのは本人だけなので、真偽のほどは定かではない。

「・・・確かに、あまりそういう勘は、昔から良くない。霊感もまったくない」と、苦笑いで自認するニューフェース。
その野太い神経で、今年は大ブレイクといきたい。