ツアープレーヤーたちの課題<アンチ・ドーピング>
好成績をあげるために意図的に薬物を使用する、いわゆる「ドーピング」問題は選手自身の命の安全や、フェア精神の保持などの理由で、いまや全スポーツにおいて禁止を呼びかける動きが出ている。それは、ゴルフ界でも例外ではなく、米PGAツアーでは来年7月から本格的なドーピング検査を開始すると発表。
今年、8年目のシード権を保持した丸山茂樹も「確かに、明らかに怪しいと噂されている選手が何人かいる」と、証言する。
近年ますますパワーゲームが主流となり、「300ヤードを超えるドライバーショットがないと相当厳しい」(丸山)と言われる米ツアー。しかし、それが薬物の力によるものであったとしたら、はなしは別だ。もっともフェア精神を重んじるゴルフにおいて、それは不公平の極み。
検査導入にはあのウッズも賛成派で、「ぜひやるべきだ」と、話しているという。最強ツアーが先導に立ってアンチ・ドーピングを推し進めていくことになれば、その波は必ずや他のフェデレーションにも押し寄せることになるだろう。
しかし、そこで問題になるのはドーピングと、持病を持つ選手が服用する常備薬との差別化だ。たとえば、丸山は昔から気管支炎の持病があり、薬には微量ながらドーピングにも使用されるステロイド剤が含まれている。また、過去にも例があるように、たとえば栄養補給の目的で摂取したサプリメントやドリンク剤が、ドーピング反応を示す場合もある。その判断をどう下すか。一定の基準が必要となってくるだろう。
「アメリカの選手は体が大きい分、薬やビタミン剤も取る量が半端ではないんです。いっぺんに平気で倍以上の薬をのんだりしているし、僕だって気管支炎の薬が反応しないとも限らない。それまでにきちんと提出できるように、今からまとめておかないといけないと思っています」と丸山も語っているとおり、特に持病のある選手はTUE(禁止薬物の治療目的使用による適用措置)の事前申請を行えば、使用が許可されるしくみだ。このほか、糖尿病の治療薬などもこの対象となるという。
また実際に、あきらかに筋肉増強目的によるドーピング反応があった場合の罰則規定を選手全員が把握しておく必要がある。米ツアーでは来季開幕の1月から6月をそのための啓蒙期間として設定し、選手に呼びかけていく予定という。
さて、では日本ではどうかというと今年、アンチ・ドーピング委員会が発足し、日本アマチュア選手権で試験的に国内初のドーピング検査を実施するなど、具体的な動きが出始めている。いまや、ドーピング問題は一部の競技に限った問題ではなくスポーツ界全体、ひいては世界レベルで取り組んでいかなければならない課題なのである。