プレーヤーズラウンジ番外編<遼くんの新・練習法>
史上最年少Vの快挙から始まって、今季最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の最終ホールでもきっちり“魅せた”。会場の東京よみうりカントリークラブの18番パー3は、プロですら恐れるツアー屈指の難関ホールだが、最終日はその週特に「調子が良い」と言っていた3番アイアンをティショットで躊躇なく握り、ピン奥3メートルにつけた。
奥から急な下りのフックラインは「1000回に1回くらいしか入らない」というほどプレッシャーのかかるバーディパット。これをど真ん中から決められたのは、「この1年の成果です!」
とはいえ、かく言う遼くんもプロの試合に出るまでは「パットの練習が嫌いだった」と振り返る。いくらしっかりしているとはいってもまだ16歳。ドライバーで遠くにかっ飛ばすのは楽しくて何時間でも飽きないが、グリーン上で地道にボールを転がす練習には限界がある。
「30分でいいから頑張ってみよう。そう思って始めても“まだ5分しかたってない”と思ったり…」。父・勝美さんに「お前はショットはシングルでも、パットはハンディ20だ」と弱点を突かれつつ「すぐに練習に飽きてしまって…」。どうしても長続きしなかったが、トーナメントに出場するようになって、父親の言葉の意味を肌で感じるようになったのだ。
トッププレーヤーたちのストロークを見て気がついた。
「左手の角度が最後まで変わらない。フォロースルーで、ヘッドスピードが変わらない。ラインと、この距離ならどの強さで打てばいい、というのが常に一致している」。プロとの差を埋めようと、自然とパッティンググリーンにいる時間が長くなった。
また、自然と工夫を凝らすように。自宅でのパッティング練習は、大好きな音楽プレーヤーを聴きながらやるようになった。 コースでは、できるだけ集中できるようにと一人黙々とボールを転がすことが多かったが「逆に、誰かと喋りながら練習してもいいのかな、と」。
たとえば、片山晋呉だ。片山はいつも、キャディやメーカーのスタッフ、マネージャーやその場に居合わせたほかの選手たちとも積極的にコミュニケーションを図り、楽しそうに笑い声すらたてながら練習している。そうやって、単調になりがちな練習にメリハリをつけながら「打つ瞬間はちゃんと集中している」。
そんなプロたちの様子を観察しているうちに、練習のコツがつかめてきたという。自分に足りない部分を補おうと、試行錯誤を続けてきた成果が確かにプレーに現れている。
その意思の強さがにじみ出て、最近では「ハニカミ」の愛称にも違和感を感じるほどの精悍な表情を垣間見せるようになった。一躍、国民のアイドルとなった高校1年生は、「通過する駅の名前を全部覚えよう」と、入学当初から楽しみにしていた電車通学もできなくなった。プロ転向の時期にもおのずと注目が集まるが、周囲に流されることなく、本人がもっともベストと思う道を選んでくれることを願ってやまない。来季は、今年の倍以上の数のトーナメントに出場するスケジュールを立てている遼くん。
勉強との両立も目標に、連覇がかかる5月のマンシングウェアオープンKSBカップにも、もちろんエントリーする予定だ。2008年もまた、目を見張る成長ぶりで全国のゴルフファンを魅了してほしい!