アマ・その他ツアー

ツアープレーヤーたちの羨望<谷口徹>

2008/02/11 10:18
自身の生涯獲得金額を契約金であっさりと石川遼に抜かれたと嘆く谷口徹

先月、たて続けに所属契約を発表した石川遼。あくまでも推測でしかないが、クラブメーカーのヨネックス社と松下電器産業株式会社との契約金を合わせると15億円は下らないとも言われており、その注目度・期待度には改めて度肝を抜くばかりである。

プロ転向を表明するなりこの金額だ。わずか16歳に、いきなりそんな破格のお金が動いたことに内心、心穏やかでいられないのはやはり先輩プロたちだ。昨年の賞金王、谷口徹も呆れ顔でつぶやいた。
「もうショックですわ~。だって僕の生涯獲得を、(契約金で)軽く抜かれちゃったんですからねえ…」。

谷口の言う「生涯獲得」とは文字どおり、プロ人生を通じて得た賞金総額のことだ。1年ごとの賞金ランキングのほかに、ツアーでは「生涯獲得ランキング」なるデータを算出している。これはもちろん、純粋にレギュラーツアーで得た賞金だけが加算されるもので、契約金やいわゆる“副業”で得た金額は含まれない。ツアープレーヤーとしての実力がもっとも計りやすい、“勲章”のようなものといえよう。

これまでのプロ16年間で10億8485万2874円を稼ぎだした谷口は、同ランキングでも尾崎将司中嶋常幸尾崎直道片山晋呉に次ぐ5位につけ、ひそかに自負してきた。
「賞金額より、勝ち星の数」が谷口の口癖とはいえ、やはり腕1本でそこまでのし上がったというプライドは、相当なものに違いない。

しかし、長年の苦労と努力を重ねて、コツコツと積みあげてきた生涯獲得賞金を、契約金であっさりと抜かれたときの衝撃といったら・・・。スター選手の誕生はもちろん大歓迎だが、「さすがに、なんかちょっと悲しくなりますよね」と、冗談まじりにこぼしていた。

もっとも、羨ましいのはそれだけではない。
昨年のドライビングディスタンス103位の谷口には、石川の飛距離はやはり魅力的に写るようだ。
「あれだけ、思い切って振っていけるんだもの…あれは、確かに凄い。なかなか、あそこまで振れないから。やっぱり、彼の飛距離はみどころがあると思う」と、言っている。

昨シーズンは中嶋常幸から「あと20ヤードも飛べば谷口も、海外で面白い戦いが出来るのに」と言われている。自らも、飛距離アップを今年の課題にあげているが、口で言うほどたやすいことではない。4月に控える5年ぶりのマスターズトーナメントは年々距離が伸びて、今回はよりいっそう厳しい戦いになりそうだがひとつ救いなのが、昨年の覇者ジャック・ジョンソンが、目を剥くほどの飛ばし屋ではないということだ。

そのジョンソンと、いちど同じ組で回ったことがあるそうだが、そのときもそれほど印象に残る選手というわけではなかった。それだけに、早起きしてチェックした昨年の衛星放送は「別の意味で度肝を抜かれた」と谷口はいう。

「メジャーで残り200ヤードなら、狙わないとブーイングが出そうな雰囲気。その中で、彼は刻みに徹して勝った。それが凄いと感動した。俺だって、マスターズであんなふうに刻んでもOKなんだな、と・・・」。
そう勇気づけられことは大きい。それに、飛ばなくたって谷口には得意のショートゲームがある。正確無比なアイアンショットだってある。「気負わず、普段どおりのゴルフをして、思いっきり楽しんで来たい」。

破格の契約金で、賞金王をも驚かせた石川の目標は「マスターズで優勝すること」だ。出場権を得ることすら困難と言われるこのメジャー戦に、谷口が初参戦したのは2002年。初の賞金王に輝いた年だった。
あれから5年。ますます技を磨き、自信をつけて臨む自身3度目のオーガスタ。日本のキングの存在感を存分に見せつけて、今をときめく16歳にもしっかりとお手本を示したい。