ツアープレーヤーたちのオフ報告<横尾要>
ほかの選手たちが開幕に向けた調整に余念がないこの時期。横尾要はまだ、思うように球が打てていない。昨年末のアクシデントが影響している。12月のツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の週の月曜日のことだった。激しい腹痛を訴えた横尾は、すぐに病院に駆け込んだ。しかし、原因がわからずとりあえず薬だけ処方されて帰宅したが、いっこうに痛みは去らない。たまりかねて、翌日に別の病院をたずねると、いきなり緊急入院するよう告げられた。
診断は急性盲腸炎。すでに薬では散らせない状態といわれ、泣く泣く出場を諦めて、すぐに手術することになったのだった。思いのほか傷は大きく、入院生活は長引いて結局12日間もベッドの上にいた。退院してもすぐに体が動かせるはずもなく、オフの始動も当然、遅れた。
新年の米ツアー「ソニーオープンインハワイ」は主催者推薦を受けて、早くからエントリーを済ませていたから、無理をして出場したが、調整不足がたたって案の定、予選落ち。「2週間以上もクラブを握らなかった経験が今までになかったから。これほどのブランクは、取り戻すのに相当の時間がかかりそう。開幕までに間に合うのか、かなり不安ですね」と打ち明けるが、それでも不幸中の幸いだったのが、発症したのが昨年末だったことだ。
「もしこれが、シーズン途中だったら目も当てられないし、まして開幕直後だったらもっとひどいことになっていたから」。昨年の最終戦こそ棒に振ったが、「僕は昔から、運は良いほうなんですよ。欠場も、1試合だけで済んでラッキーでした」と前向きにとらえ、帰国してすぐトレーニングを開始。入院生活で、落ちてしまった筋肉強化に励む日々だ。
今年は、新年早々に石川遼がプロ転向を表明した。賛否両論が飛び交ったが「僕は、むしろ遅いくらいだったと思う」と、横尾は言う。他人事ながら、史上最年少優勝を達成してからさまざまな大会に引っ張りダコだった石川家の経済状況が、横尾には心配だった。自身もジュニア時代から数々の大会に出場してきただけに「やっぱりアマチュアが試合に出るのは金銭的に大変なんです」と、横尾は言う。「いま旬な選手だし(プロ転向は)もっと早くても良かった。それまでにかかった経費を取り戻すのは、これまた大変でしょうけど頑張って欲しい」と16歳にエールを送ったが、もちろん人の心配ばかりしているわけにもいかない。「僕だって、頑張りますよ!」と横尾。
「ファンのみなさんには、遼くんを見に来るついででも良いから、とにかく男子プロの本当の凄さを見て分かって欲しい。女子ツアーに押されっぱなしでは悔しいし、これを機会に一丸となって男子ツアーを活気付けなくちゃって思ってます!」。新シーズンに向けて決意も新たに、端整なマスクをキリリと引き締めた。