ツアープレーヤーの大英断<伊澤利光>
これまでメタボとは無縁だった選手が昨年末から4キロ増。実は、1月時点では8キロ増だった。「さすがにやばい」とダイエットに取り組んで、なんとか開幕までに間に合わせたが、「まだ、もう少しね」と苦笑しながら、ちょっぴり前に突き出た腹をさすった。
肥満の原因は、昨年12月から始めた禁煙の影響だ。「1ラウンドで16本は吸っていたという」というヘビースモーカーのいきなりの大英断は、周囲を大いに驚かせたものだが、本人の中では以前から疑問があったのだという。
ミスショットしたり、ストレスがたまったときに、喫煙が許されているホール間のインターバルで「気分転換に」とふかしてみても、「スコアが良くなるわけでもなし」。しかも、あまり体に良くないことは言うまでもない。「わざわざ、毒を吸ってるようなもんだよな・・・」。
そんな気持ちがいよいよ本格化したのは昨年の最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」2日目のことだった。インフルエンザでやむなく途中棄権。毎日必ずつけていた晩酌はもちろん、食欲不振の日々が続いて、そのままタバコもフェードアウトしてしまった。
以来、タバコを買いに走ったり、喫煙コーナーに駆け込む手間もなくなって、快適なオフを過ごしてきたという。
そして、いよいよシーズン突入。開幕戦の「東建ホームメイトカップ」は「もしかしたら、試合が始まったら欲しくなるのかも」との懸念がよぎった。
実際に、初日の5番ホールで「吸いたいな」という思いが少し頭をもたげたが、専属キャディの前村直昭さんも伊澤につきあって、同時に禁煙を始めたから当然、持ち合わせがない。
「ま、いっか」。本人が、禁煙成功を確信した瞬間だった。
この大英断が今後、ゴルフにどんな影響を及ぼしてくれるのか。
「まだ分からない。何せまだ始まったばかりだからね。今はなんとも言えないけれど」。
好成績に結びついてくれればいい。
「自分でも、そう願うよ」と、笑った。