アマ・その他ツアー

ツアープレーヤーたちのノックダウン<塚田好宣>

2008/08/18 18:47
世界のメジャーで地元紙の一面を飾った塚田好宣

世界のメジャーで地元紙の一面を飾り、果ては“1位”の座を獲得した男がいる。プロ11年目の塚田好宣(つかだよしのぶ)だ。それは、2004年の全英オープン。シンガポールで行われた世界予選のアジア大会を突破して権利を得た、ロイヤルトゥルーンでの出来事だった。

練習日にキャディとたわむれていたところを、海外メディアのカメラマンにキャッチされた。そのときの風景を、本人に再現してもらったのがこの写真。

都合上、今回のは自作自演してもらったが、あのときは、かたわらのキャディに愛用のボクシンググローブ型のヘッドカバーで「ドスッ」とやられた。「その瞬間を撮られたんです。それが翌日の新聞にデカデカと出て・・・」。撮影したカメラマンも、よほど気に行ったのだろうか。同メジャーでは毎年、会場のメディアセンター内で写真コンテストを開催しているが、応募作品として出品されたこの1枚が、みごと最優秀賞に選ばれたのだ。「実はメジャーで1位になっちゃったのが、この僕です」と、笑う。

生まれて初めて足を踏み入れたメジャーの舞台に「プロになって本当に良かったと、生まれて初めて思った瞬間でした」と、感慨にふけったのもつかの間、あいにく本戦のほうは、通算17オーバーをたたいて予選落ち。特に2日目はボギーのオンパレードに「途中でプレーをやめたくなった」というほどの屈辱を味わったのだ。まさに、リンクスコースにノックダウン・・・。そんな“モデル”の背景も、写真審査の評価につながったのかもしれない。

出場権のない時代はもちろん、日本ツアーのオフシーズンには今も積極的に海外に足を伸ばす。先週、インドにいたかと思うと翌週にはひょっこりとマレーシアにいたりする。アジアの中でも特にタイ・バンコクを「第二の故郷」と呼ぶほどこよなく愛し、米国留学で習得した英語のみならず、タイ語すらも器用に操る塚田をして「日本にいるときよりもむしろ、アジアで戦っているほうがあいつにはしっくり来る。生き生きしている」と、評するプロ仲間もいるほどだ。

それだけに海外の大会でこそ、より自分らしさを発揮するためか。はたまた、本人が醸し出すその個性が自然と海外メディアの目にとまるのか。日本予選を突破して、2度目の出場を果たした今年の全英オープンで、またしても“一面”を飾ったのだ。

やはり練習日。ラウンド中の腹ごなしに、いわゆる地元・英国のファーストフード「フィッシュ&チップス」をパクついていたら、遠くのほうで塚田を呼ぶ声がする。顔を上げると、特大の望遠レンズでこちらを狙っているカメラマンの姿が。日本でいう白身魚フライとフライドポテトを頬張りながら手を振ったところを激写され、その写真が今度は大会の公式ホームページの扉にデカデカと載ったのだ。

しかし、本戦はまたも予選落ちで、無念の帰国をした塚田は苦笑混じりに言ったものだ。
「・・・いい加減、ゴルフで一面を飾らないとね!」。国内でも6月のミズノオープンよみうりクラシックで3位につけたあとは、予選落ちが続いているだけに「そろそろ本腰入れます」。リング上に、突っ伏したままでは男がすたるというものだ。