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佐藤信人の視点 勝者と敗者

クーチャーの磨きをかけたフェードボール

「ソニーオープン」最終日は、単独首位からスタートしたマット・クーチャーが、序盤でアンドリュー・パットナムに首位を明けわたしたものの、終盤で追いつき、すぐに突き放す展開で今季2勝目を挙げました。

パットナムはツアー本格参戦2年目の29歳。まだまだ伸び盛りの若手に対し、クーチャーは賞金王にも輝いたことがあるツアー通算8勝(今大会で9勝目)のベテラン。優勝がかかった終盤の大事な場面で、ショットのキレ、パットの精度ともに圧倒し、最後は4打差をつける貫禄の横綱相撲を見せつけました。

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年齢差13歳、経歴にも大きな差のある二人ですが、共通していることがあります。それは持ち球がフェードのショットメーカーという点です。パットナムの昨季のスタッツでは、パーオン率18位(70.4%)、リカバリー率39位(61.5%)と、アイアンやウェッジの精度が高い結果となっています。飛距離はそれほどではありませんが(ドライビングディスタンス 116位 293yd)、ショットのキレ味が特徴であると言えます。今季飛躍が期待される選手のひとりで、クーチャーと同じフェードボールを武器としています。

そんな二人が優勝争いを繰り広げたワイアラエCC(ハワイ州)は、実はフェードヒッターに不利とされる左ドッグレッグのホールが多かったのです。特に終盤、14番(パー4)15番(パー4)16番(パー4)18番(パー5)と最後まで同じようなレイアウトが続きます。

フェードヒッターが左ドッグレッグを攻略するには、ティショットを左ぎりぎりに狙い、2・3打目がしっかりグリーンを狙える位置、しかもフェアウェイ真ん中に落とすことが求められます。飛距離を稼ごうとすれば突き抜けてしまいますし、ショートすれば木にかかり2・3打目が難しい状況となってしまうからです。

この状況でクーチャーは、徹底的に持ち球であるフェードボールでティショットを成功させました。彼は昨シーズン、8年連続で続けていたプレーオフ最終戦「ツアー選手権」の進出を逃し、フェデックスランク76位という不本意な成績で終えました。

昨年のオフ、クーチャーはコーチであるクリス・オコネルとともに、例年にないほどスイングチェックを繰り返したそうです。もともとトップの形がレイドオフ(シャフトが目標方向より左へ向く形)だったのに対し、昨季のスイングでは少し飛距離を求め、ややアップライト気味になっていました。今季からはレイドオフに戻し、以前のフラットな形に戻すことに踏みきりました。

長年続けてきた以前のフォームに戻すと聞くと簡単に聞こえるかもしれません。しかし逆を言えば、長年続けていたものから離れ、新たに目指したものを途中で断念するという決意も、苦渋の決断だったと推測できます。「以前のものに戻した」という表現より「より一層磨きをかけて精度を上げた」という言い方のほうが的確かもしれません。

クーチャーほどのベテランでも、賞金ランク上位の常連でも、オフには試行錯誤を繰り返す。理想の形を信じ続けた者だけでなく、新たな道を断念し元の道に戻って勝利の歩みを押し進めていく者もいる――。一流選手の力が衰える時とは、成績を残せなかった時ではなく、進化を諦めた時なのかもしれません。

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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