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2019年 ザ・ノーザントラスト
期間:08/08〜08/11 場所:リバティーナショナルGC(ニュージャージー州)

佐藤信人の視点 勝者と敗者

スロープレーはデシャンボーだけの問題ではない

プレーオフシリーズ第1戦「ザ・ノーザントラスト」から、スロープレーによるガイドラインが明確化され、取り締まりを強化する働きが始められました。

米ツアーではこれまで各組の規定を設けるのみで、個々の選手のプレーを計測するまで問題視してこなかった経緯があります。ブルックス・ケプカ選手(米国)、ロリー・マキロイ選手(北アイルランド)の指摘により、ようやくスロープレー撲滅へ一歩踏み出した形となりました。

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ただ、今回の件で思うのは、少しだけ報道が過熱しすぎているように感じたことです。2日目にブライソン・デシャンボー選手(米国)が1パットに約2分20秒をかけたシーンがクローズアップされ、SNSなどの反応とそれを受けた報道に少し違和感を覚えました。

スロープレーは確かに同伴者のことも観客のことも無視した自己中心的な行動であり、国内外問わず改善するべき事項です。しかし、話題は誰が遅くて、誰が常習犯なのか、ということばかりに焦点が当てられ、犯人捜しの様相を呈してしまっています。

そもそも米ツアーでは、ここまでスロープレーの問題を取り沙汰してこなかった過去があります。ジャック・ニクラス(米国)、グレッグ・ノーマン(オーストラリア)、タイガー・ウッズ(米国)はプレーが遅いと囁かれてきました。選手としては尊敬するべき存在であった彼らも、プレーのスピードではある程度、許されてきた部分があったのです。

もうひとつ考えられる要因は、米ツアーの競技委員は元選手という人が多く、どちらかというと客観視する側ではなくプレーヤー視点で発言する人が多かったこと。選手側からするとシード権がかかった試合での一打一打や、メジャー優勝がかかった大事なパット前では、ある程度、時間をかけることを許されてきた事実がありました。

デシャンボー選手の問題となったパットを映像で確認しましたが、あれだけを通しで見ると遅すぎると感じはしました。ただ、従来のテレビ中継なら、あのようなインターバルでは他の選手の映像に切り替え、そのまま流さないのがセオリーです。あの1パットだけがとりわけ遅かったかという判断はできない、というのが私の正直な見解です。

選手は同伴者を気遣い、遅いなと思わせてしまわないレベルで、自分のプレーを進行していきます。そこにはロープ外からでは判別できない、プレーヤー同士の空気感が存在します。40秒間というルールが導入されても、指摘された選手は「俺だけじゃない」「あいつのほうが遅い」といった言い争いになることが予想されます。

直近4、5年の間で世界的に騒がれるようになったスロープレー問題。もちろんゴルフ界のために取り組まなければならない課題ですが、オートマチックに罰を与えることで、優勝争いでの緊張感の中の間合いが失われる可能性もあります。今後は許されるものと、罰せられるべきものを、慎重に判別して対処していかなければならないのかもしれません。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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