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佐藤信人の視点 勝者と敗者

「恥ずかしいよ」ベテラン優勝に見る矜持

国内初戦「東建ホームメイトカップ」を制したのは、44歳のブレンダン・ジョーンズ選手(オーストラリア)。3季ぶりのツアー通算15勝目になりました。

最終18番(パー4)、テレビ解説の丸山茂樹さんが「ここもパターか」と驚きました。ジョーンズ選手はグリーン周辺のラフから寄せる3打目で、一般的なウェッジではなく、パターを握ったのです。

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結果的にパーで締めて優勝しましたが、実は17番(パー5)でもグリーン手前フェアウェイからのアプローチでパターを使いました。私は「ひょっとすると、ブレンダンもグリーン周りがダメなのかな?」と思っていました。

その後の優勝会見で、ジョーンズ選手は17、18番の寄せでパターを使ったことに「(ウェッジではなく)恥ずかしいよ。でも、私は常に成功の確率を考えてクラブを選ぶんだ」と述べたといいます。

ゴルフとはすごく不思議なものです。キャリアを長く積むほど 何かしら恐怖心のようなものが芽生えるのです。それは必ずしもすべての選手ではありませんが、何十年と続くツアー生活で悩みのない選手は、ほとんどいないと思います。

悩みの種はドライバーか、グリーン周りか、パターなのか、それは人それぞれ。例えば43歳のヘンリック・ステンソン選手(スウェーデン)はドライバーを嫌い、3Wでティショットを打っていた時期がありました。

ひとつ言えることは、その恐怖心との向き合い方がキャリアの息の長さを左右するということです。

これは僕の考えですが、海外選手は日本選手以上に恐怖心との向き合い方が上手いと思います。日本選手は真面目がゆえ、努力で「なんとか克服しよう」、「ギャラリーの前でグリーン周りではパターは持てない」と思う人が多いように感じます。過去の自分にプライドもあるでしょう。受け入れることが難しく、徐々にツアーから姿を消すことは少なくありません。先に「ブレンダンも」と書きましたが、実は、私もその一人なのです。

昨季賞金ランキング2位の36歳、ショーン・ノリス選手(南アフリカ)は、グリーン周りのウェッジは苦手ですが、パターなどを使いスコアを作っていますよね。自分のコンプレックスを受け入れ、必要以上に自分を責めることをしない。それは、すごく難しいことなのです。

だから私は日本、海外問わずツアーの第一線にいるベテラン選手を本当に尊敬しています。

話をジョーンズ選手に戻しますが、若い頃は、実力がありながら、あまりゴルフに執着するような感じではなかったように見えました。その後、2013年から2年連続で左手首を手術。常に引退の2文字が頭によぎったといいます。ただ、昨年ごろにプライベートなどが充実したそうで、すごく明るくなった印象を受けました。

世界ランキングは5年ぶりの2桁台の98位に浮上し、メジャー「全米プロゴルフ選手権」の出場権獲得に前進しました。今年の活躍次第では来年の「マスターズ」(年末の世界ランク50位以内など)の可能性もあると思います。ジョーンズ選手が唯一出場していないメジャーが「マスターズ」です。

07年末は同ランク59位、08年末は53位、10年末は54位。これまで、わずかに届かずオーガスタ行きを逃し続けてきました。

キャリアを積むほど、そこに立ちはだかる困難は増えます。14年ぶりに「マスターズ」を制したタイガー・ウッズ選手のような、待ち望まれた派手な復活優勝ではありません。ただ、自らの弱みを受け入れ、手にした勝利。そこにも、ゴルフの魅力が詰まっていると思うのです。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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