笑顔の裏で重圧から“崩壊”も イ・ボミがつかんだ2年連続女王の座
◇国内女子◇大王製紙エリエールレディスオープン 最終日(20日)◇エリエールGC松山(愛媛県)◇6474yd(パー72)
イ・ボミ(韓国)が2年連続の賞金女王に輝いた。大会を通算9アンダーの26位で終えたが、今季の獲得賞金総額を1億7411万4764円とした。「うれしいです。賞金女王を決めたら少し休みたいと、今年に入ってからずっと思っていました」。大きな目を見開いて笑う表情は、喜びより安堵感が勝っていた。
10番からスタートする裏街道。優勝争いとは無縁の組に多くのギャラリーがついた。人気者の“晴れ舞台”に北海道から1泊の弾丸で応援に来るファンもいた。最終9番で、自らのタイトルに花を添える4mのバーディパットを決めると、大きな拍手に包まれた。「なんで私を応援してくれるんだろう?分からないです。でも、ファンの姿を見ると心が温かくなるんです」
昨シーズン、ツアー新記録となる2億円超えで賞金女王を勝ち取った。しかし、自らが作った大記録は、想像以上の苦しさとなってはね返ってきた。「今年は去年よりもきつかった。タイトルを守るほうがつらかった」。8月に4勝目を挙げて、昨年を上回るペースで賞金を重ねた。だが、前年の優勝大会や2年連続で同一試合を休めない規定も影響し、8連戦の過密日程となった。結果が良くても悪くても報道陣に囲まれる日々も続き、疲労はふくれ上がった。
そして、一度“壊れた”。7連戦目だった10月の「日本女子オープン」。前3試合のトップ10圏外も影響し、周りから「調子悪いの?どうした?」と心配の声が相次いだ。肉体的にも精神的にも、すべてが限界だった。「一番つらい時期でした。調子も悪かった。試合に集中できなかったです」。第1ラウンドの途中、相棒の清水重憲キャディにポツリとつぶやいた。「思い通りに身体が動かないんです…」。陣営は普段嫌う”棄権”を即決した。
翌週の「スタンレーレディス」では、元気な姿を見せた。だが、重圧はまだあった。開幕前日の午後8時。清水キャディに電話で言った。「わたしのパターが曲がって見えるんです…」。すぐに駆けつけた清水キャディから「そんなにすぐに曲がるものじゃない。大丈夫」と声をかけられた。パットを放った際の違和感を気にしすぎていた。
「プレッシャーはどうしてもかかる。(チームの)みんなで、楽しく頑張っていくしかない」。賞金女王に決まったこの日、改めて胸に誓った。「清水さん、マネージャーさん、トレーナーさん、ファンの方々。みんなのことを考えて、できる限りゴルフを頑張っていきたい」
話は、早くも来年の賞金女王に…。「もっとプレッシャーがかかるんですね」。そう小さくため息をついたイを、みんなが温かい眼差しで見守っていた。(愛媛県松山市/林洋平)