「フェース下目でほんのりヒール」 打痕が物語る桑木志帆のショット力
◇国内女子◇ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン◇利府GC(宮城)◇6600yd(パー72)
プロのクラブフェースには、ウソ偽りのない記録が残る――。大会開幕前に女子プロのクラブセッティングを調査していた時のことだ。シーズン日米4勝目を遂げた桑木志帆のアイアンを撮影していると、真っ先に目に飛び込んできたのが9番アイアンのフェースに刻まれた“打痕”だった。
「2年間使用している」というブリヂストン「241CB アイアン」には、深く、くっきりとボールの跡が残っている。日々の反復練習の濃さをそのまま可視化したような打痕は、よく見るとフェースの下目で、ほんのりヒール寄りについていた。
桑木に打点の位置について尋ねると「ちょっとヒールですよね」と恥ずかしそうに話し始めた。「昔から結構ヒール気味に打っているというか…。でも特に意識しているわけではなく、気持ちいいところで打ったらそこなんですよね」
フェードヒッターの桑木にとって、ややヒール寄りの打点は心地よく振り抜ける位置なのだろう。上下方向に関してもフェース下目でボールをとらえているあたりに、ショットメーカーらしさがにじむ。
実は、この打点位置にはクラブ側の裏付けもあった。クラブ設計家で「ジューシー」を主宰する松吉宗之氏に241CBの重心位置を調べてもらったところ、ブリヂストン伝統の短重心モデル(重心距離=約34mm)で、芯がヒール寄りにあるというのだ。「スイートスポットがヒール寄りで、ヒール目で打ちたい上級者好みの設計です。スイングがぴったり合っているのではないか」と松吉氏は分析する。
桑木にとって、この打点位置はショットの状態を測る一つのバロメーターにもなっているようだ。「これよりヒールには当てたくないですね。もっとヒール寄りに当たっていたら、『どこかが突っ込んでるのかな』という感じになります」
まさに“雨垂れ石を穿つ”。ショットの精度とは、特別な才能だけではなく、こうした日々の反復の先に生まれるものなのかもしれない。使用2年目のアイアンでメジャー「AIG女子オープン(全英女子)」を制す快挙を成し遂げた。言葉を尽くして語るよりも、クラブのフェースに刻まれた打痕こそが、すべてを雄弁に伝えていた。(宮城県利府町/服部謙二郎)