幕切れの“サヨナライーグル”に「プチパニック」 神谷そらが残り4ホールで4打差大逆転
◇国内女子◇Sky RKBレディスクラシック 最終日(18日)◇福岡雷山GC(福岡)◇6489yd(パー72)◇曇り(観衆3049人)
何が起こったの? 最終18番で5mのイーグルパットがカップに消えると、神谷そらが大混乱に陥った。「打つ前は“これを入れたら勝つんだ”と分かってたんです。でも、入ったら“あれ?結局どうなの?”と分かんなくなって…」。本人いわく「プチパニック」。齋藤優希キャディの表情を見て、やっと優勝を確信した。
通算9アンダーの首位タイで並ぶ金澤志奈、小祝さくらと最終組で回り、8番終了時点で金澤と12アンダーで並んでいた。ところが、9番でアプローチミス後に3パットでダブルボギー、11番(パー5)はティショットで右OBを打ってボギー。残り4ホールの時点で金澤に4打差をつけられ“圏外”に去った…と、思っていた。
15番のセカンド地点で、グリーン奥にある上位勢のリーダーボードが目に入った。「名前が8人あったかな。でも、自分の名前はなくて。“トップ3には入りたいな”と思ったけど、優勝争いは考えてなかったです」――。ドラマの幕はそこから上がった。
15番は2打目をウェッジで2mへ。実測176ydの16番(パー3)は7番アイアンで6mへ。ティショットを右ラフに曲げた17番は155ydを9番アイアンで5mへ。気がつけば3連続バーディ奪取。金澤に1打差と迫った。
18番は492ydの短いパー5。総ヤーデージが短い福岡雷山GCでこの日も5度しかドライバーを握らなかった飛ばし屋が「唯一気持ちよく振れるホール」だ。「イーグルは考えてなかったですけど、プレーオフには持ち込みたいな、と」。会心のドライバーショットでフェアウェイを捉えると、残り距離はフロントエッジまで185yd、ピンまで207yd。ただし、ボールの止まった場所は排水口の近くで強烈なつま先下がり。笑ってしまうほど「すごいライ」だった。「引っ掛けのミスだけはしないように」と心がけた4番ユーティリティのひと振りは、ものの見事にピン右5mについてくれた。
初優勝の2023年「フジサンケイレディス」は無我夢中だった。同年「日本女子プロ」での2勝目は最終日に熱中症気味になり、あまり記憶がない。「初めて優勝のプレッシャーを感じて勝てた」3勝目だが、神谷は「早すぎました」という。
昨年オフに弾道計測器でスイングをチェックして、坂詰和久コーチから「フェードの軌道」と助言され、ドローから球筋変更に取り組んだ。完成度は「まだ20%」らしい。一方で、昨季も数試合タッグを組んだ齋藤キャディに、今季からほぼ専属での帯同を依頼した。かつて丸山茂樹の相棒として、丸山のPGAツアー2勝目だった2002年「バイロン・ネルソンクラシック」でバッグを担ぎ、国内では23年まで7年間も申ジエ(韓国)をサポートしたベテランを頼った。ともすればネガティブ思考に陥り、感性頼みの感覚派である自分の弱点をフォローしてもらうようにした。心身両面の自己改革に取り組み出したばかりだ。
今年から特別協賛に業務系システム開発などの「Sky」がついた大会に「縁を感じていた」という。理由は単純。「Sky」は「そら」だから。「でも、周りから“コースはそらちゃん向きじゃないよ”と言われていて…」。確かに縁があった。将来的な米ツアー参戦を夢見る大器が、規格外の展開で頂点に立った。(福岡県糸島市/加藤裕一)