「人前でゴルフをするのが怖かった」 川崎春花が乗り越えた涙の日々
◇国内女子◇ミネベアミツミ レディス 北海道新聞カップ 最終日(7日)◇真駒内CC空沼コース (北海道)◇6667yd(パー72)◇曇り(観衆2030人)
史上2人目の4日間ノーボギー優勝がかかっていた川崎春花は出だし1番から3パットのボギーを喫した。ピン右8mあったファーストパットは2mオーバーし、パーパットは入らず。「自分のミスでボギーにしたから『何やっているんだろう』って」。心がざわついた。
4打リードで出るも、同期であり同世代の尾関彩美悠が2番、4番でバーディを奪い、4ホール終えて差はわずか1打。「負けたくないという気持ちはあったけど、自分はそういう感情を出すと上手くいかないタイプ。“自分との勝負”と思って」手前2mにつけてバーディを奪った5番(パー3)で集中力を取り戻した。
ハーフターン時は2位の尾関と3打差に離し、後半でバーディ2つを奪取。6Iで3m弱につけた17番(パー3)は「ずっと心がザワザワしていたけど、とくに集中してできた」とバーディ。力強いプレーで「69」で締めくくり、後続に4打差の通算18アンダーでツアー3勝目を挙げた。
昨年6月「ニチレイレディス」では精神的に疲弊し、会場に来るだけで涙が出た。「それこそコースの駐車場についてクラブハウス行くまでに、お母さんに電話をして『行きたくないなぁ』って。ちょっと涙も出た。自分でもどこにボールが飛ぶか分からないし、気持ち的にも全然上がらなくて。人前でゴルフをするのが怖かった」
それでも、「このまま終わるのはイヤ」と恐怖心を払しょくするためにクラブを振り続けた。「スイングは振るところから見直して。私は結構手首が悪さをする」とドライバーからパターまで不振の原因を探った。パッティングは握り方を順手からクロスハンドに変え、「普通にクラブを振るだけなので、自分で“エイッ”て打ってパンチが入るミスは無くなったし、距離感が合わないみたいなのはなくなった」。7番、8番(パー3)と2.5m近いシビアなパーパットを決めきった。
涙が出るほどつらかった日々を支えてくれたのは、昨年から飼い始めた犬(チワワ)の「小梅ちゃん」だという。ちょうど1年前の7月に両親と揃って食事したお店の近くにあったペットショップで出会った。
「その時はおねだりしたけど『誰が面倒みるんだ』って。でも、お父さんが家に帰ったあとにもう一回お店に戻ったみたいで、サプライズでした」と家族の一員になった。
1年以上にわたって続いた苦しい時期、クラブハウスのトイレにこもって泣いたときもあったが、そんな姿を父親の太郎さんと母親の雅子さんが見守ってくれた。今週は大会2日目に母親が、「優勝争いをしたら来て」とお願いしていた父親が最終日に京都からかけつけた。
「私自身もつらかったけど、近くで見ていてくれたお父さんもお母さんもつらかったと思うので優勝を見せられてうれしい」。弾ける笑顔で2年ぶりの優勝をかみしめた。(札幌市南区/石井操)