原英莉花「選手生命は短いと思っていた」 腰の手術を乗り越えつかんだ覚悟
◇国内女子メジャー◇日本女子オープンゴルフ選手権 最終日(1日)◇芦原GC海コース(福井)◇6528yd(パー72)◇雨のち晴れ(観衆9127人)
ツアーに参戦するようになってから、原英莉花のボールにはその年のテーマが刻印されている。今年は『readiness』。直訳すれば「準備」だが、原は「覚悟」の思いを込めた。だが、そう決めた時、まさかゴルフ人生を左右する大きな転機が訪れるとは思わなかった。
今大会は最終日に「68」をマークして、菊地絵理香を振り切った。2020年以来の大会2勝目、国内メジャー3勝目。「本当にゴルフができるのかと思った時期を考えたら、早かったなと思います」と苦闘の日々を振り返った。
5月、長らく悩んだ腰痛のためヘルニア摘出手術を受けた。注射を打ちながら、だましだまし戦ってきた。「練習もやりたい動きもできない。でも試合をこなさないといけない」。自信が持てないまま試合を迎える日々。「選手生命は短いと思っていた。1回でも予選に落ちたら、気持ちが持たない気がして」。体の限界を感じるなか、4月末に激しい痛みに襲われて、手術に踏み切った。
リハビリ開始から1カ月後に球を打ち始めた。フルスイングできたのは、復帰戦の8月「北海道meijiカップ」直前だ。復帰後ももどかしいプレーは続いたが、手術前にあったネガティブな気持ちは消えた。北海道meijiカップは予選落ちしたが「押し殺していた気持ちが、また復活している感じ。すごく楽しい」。今は悔しさもゴルフができる喜びに変わった。
練習に打ち込み、ショットに手ごたえをつかんだのは先週「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」初日のこと。グリーン左に池が絡む13番パー4。左から強いアゲンストの中、通常なら3Wを持つところを、思い切って1Wで打ち、フェアウェイをとらえた。「これか!」。ドライバーショットに自信が持てたのは久々だった。
今大会は持ち前のパワーゴルフも戻ってきた。パー5のほとんどで2オンを狙い、4日間で11ストロークも伸ばした。最終日も5番で2オンでイーグルを決め、菊地に1打差をつけた。15番は強いアゲンストの中、2打目を花道手前まで運び、55ydを寄せてバーディを奪い、リードは3打差に広げた。
痛み、不安、手術を乗り越え、力強く勝った。「戦い抜いた。ずっと自信を持ってプレーできました」。2週後には、来季の米ツアー出場権をかけた2次予選会に挑む。「まだまだ、やるぞ」。選手生命を危ぶんだ過去が嘘のように、原がより強くなった。(福井県あわら市/谷口愛純)