「同じ病気の人を勇気づけたい」 菅沼菜々が抱える“広場恐怖症”
◇国内女子◇NEC軽井沢72ゴルフトーナメント 最終日(13日)◇軽井沢72G 北コース(長野)◇6702yd(パー72)◇晴れ(観衆3051人)
高校2年生の時、電車に乗っていた菅沼菜々は、突然大きな不安感に襲われた。最初は、意欲や自発性が低下し、感情の起伏が小さくなったり、周囲に無関心になる「無気力症候群」と診断されたが、実は「広場恐怖症」だったと判明したのはプロ転向後、今から3年前だ。
広場恐怖症とは、広場に限らない特定の場所において、強い恐怖や不安を感じてしまい日常生活に支障をきたす病気のこと。菅沼の場合は、飛行機や電車といった、自身のタイミングで外に出られない公共交通機関を利用する際にその症状が現れた。
プロテスト合格翌年の2019年。当時、所属契約を結んでいた企業主催の大会に出るため、新幹線で北海道に向かおうとした。大宮駅で家族とともに一度は乗車したものの、不安感に耐えきれず、発車ベルが鳴った直後に家族に黙って一人で下車。大会出場はキャンセルした。
その後も薬を服用しながら何度か新幹線を利用して試合に向かったことはあったが、会場で体調を崩してしまった。公共交通機関が使えない中で、それでもプロゴルファーとして全国を転戦しなければならない。医師とも相談しながら、現在はコーチも務める父・真一さんや、母・めぐみさんが運転する車に乗って本州、四国、九州のツアー会場を回る。空路を余儀なくされる沖縄の開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」や北海道開催の大会はプロ6年目にして一度も出たことがない。
真一さんは「もうずっと(公共交通機関に)乗れていないけど、それでも本人はそれをプラスに変えていこうとしている。同じような病気で悩まれている方に『やれるんだ』というところを見せたいんじゃないかな」と語る。
菅沼は「運転も本当に疲れるのに、いつも応援してくれて感謝しています」と、しきりに両親のサポートに感謝を口にする。「目に見えないので理解がなかなか得られない病気だけど、同じような症状を持っている方を勇気づけられたら」。笑顔を振りまきながら懸命に戦う姿を社会に発信していく。(長野県軽井沢町/内山孝志朗)