260yd飛ばして“谷越え”バーディ 19歳の櫻井心那に漂うすごみ
◇国内女子◇資生堂レディスオープン 2日目(30日)◇戸塚CC西コース(神奈川)◇6605yd(パー72)◇曇り(観衆4386人)
予選36ホールで2番目に難度が高かった410ydの15番パー4は、ほとんどの選手が深くえぐれたフェアウェイから、見えないグリーンへのセカンドショットを余儀なくされる。櫻井心那のドライバーショットは、その“谷”を越えた。弱いフォローの風が吹いていたとはいえ、キャリーで260yd弱が必要なエリアをとらえた。セカンドはピンまで141yd。ショートアイアンでピン右4mにつけた。
「グリーン面ですか? 見えました。昨日も見えたんです」。限られた選手しか見えない景色を2日続けて見て、唯一フィールドで連日のバーディを奪い、少し誇らしげだ。
器具を使った筋力アップはしない。トレーニングは基本、屋内で自重の負荷に頼る。それでも、昨季から3キロ増えた。「太っただけ。レギュラーツアーで稼げるようになって、いいお肉を食べて…。良質のタンパクを摂れているからだと思います」と恥ずかしそうに笑うが、ただ無駄な肉がついたわけではなさそうだ。
プロ1年目の昨季、245.44yd(規定ホール数に達せず参考記録)だった平均ドライビングディスタンスは今季、部門5位の254.42ydへ。育ち盛りの19歳はナチュラルに約9yd、飛距離を伸ばした。曲がり幅が大きかったフェードボールは、よりストレートに近くなり、力感も増した。
下部ステップアップツアー史上最多の年間5勝を達成した昨季から、初のレギュラーツアー本格参戦となった今季。「レギュラーは“難しい”っていう先入観があって、最初はビビってました」。開幕から出場6戦で3回予選落ちを喫した後、徐々にコースセッティング、フィールドの顔ぶれに慣れてきた。直近の出場11戦で予選通過10回。「ステップ(のセッティング)は下りのパットもチャンスだったけど、レギュラーはピンより上につけたら速くて…。あとグリーンを外した場所もセーフティじゃないところだと、寄せるのが難しい」。下部ツアーとの違いを受け止めつつ、いたずらに恐れることはなくなった。
ツアー初優勝を手にしたい。「早く勝ちたいです。でも、コーチもキャディさんも“今は準備期間だから”と言って、焦る気持ちを抑えてくれます」。9月に調子をピークに合わせることも目下のテーマ。9月7日から、故郷長崎のパサージュ琴海アイランドGCで開催される「日本女子プロ選手権」。同月末に開幕の「日本女子オープン」(福井・芦原GC海コース)。2つのビッグタイトルがターゲットだ。それでも、2日連続「71」の通算2アンダー、首位と5打差で折り返した今週、初優勝を飾ってもおかしくはない。そんな一人になってきた。(横浜市旭区/加藤裕一)