「お父さんの顔に泥を塗るのが嫌」 初V工藤遥加の涙
◇国内女子下部ステップアップツアー◇ツインフィールズレディーストーナメント 最終日(20日)◇GCツインフィールズ ゴールドコース(石川)◇6487yd(パー72)
「お恥ずかしい話なんですけど、勝てなくていいって初め思っていて。プロになることが目標だったんですよ。正直辞めたいって。お父さんの子供なので、注目されるのがそっちしかないし、そんなに自分自身うまいとも思ってないし、強くもないし、アスリート向きだと思ってなかった」
プロ13年目、30歳の工藤遥加が通算7アンダーでツアー初優勝をあげ、涙を流した。父は投手としてプロ野球の西武などでも活躍し、優勝請負人とも呼ばれた工藤公康氏。歴代1位となる23年連続勝利など輝かしい成績を残してきた。競技こそ違うが、2011年のプロ入りから同じアスリートとして常に比較されてきた。
「注目されることが嫌で、どうせ注目されても、どんだけ成績が良くても、お父さんの顔に泥を塗っている感じがして嫌だったんですよ。もうやりたくなかったし、そういう気持ちで試合に行くと、やっぱり負けるじゃないですか」
過去には父がコーチとしてツアー会場でも指導することがあったが現在は“相談役”の立場だ。
「今年は本当に親子っていう感じで接してもらっていて、もちろん競技に関してはお互いプロなので、というか私は全然プロじゃなかったんですけど、やっとプロになれたって感じ。やっと自分がうまくなりたいから、頼るしかないんです。毎回試合が終わるごとに一緒に見てくれて、ルーティンとか、顔の表情とか、パターを打つ時の姿勢とか、一緒に反省してくれて、課題はここだよとか教えてくれる」
2011年の新人戦「加賀電子カップ」は制したが、プロ入りから過去最高の賞金順位は14年の53位。飛距離を武器に活躍を期待されながらもシード入りを逃してきた。
「でも去年からは私の人生一度きりだし、もっと一生懸命やんないとダメだって思って。今私のことを応援してくれているのは、私のことを好きだって言ってくれて、周りにいてくれている人だし、スポンサーさんもそうなんですけど、だからその人たちに恩返しがしたいって気持ち。去年QT(予選会)ダメで、もうダメだと思ってもどこのスポンサーさんも離れないでいてくれて、じゃあもう気持ちで恩返しするしかないと思って、そこからですね」
オフにはソフトボールの強豪ビックカメラと2週間の合宿を張った。「全てにおいてすごいと思った。私も負けてられないと思ったし、やっぱり一生懸命やっている人は口にする言葉とかも誠意みたいなものがありますし、なんか素敵だなって」。同チームに所属する東京五輪金メダリスト藤田倭さんらから刺激を受け、オフは走り込み10キロを自身に課した。
プロテスト合格から4314日で下部ツアー初勝利も通過点。これからも偉大な父と比べられるだろうが、「こないだ還暦になって優しくなっちゃって、昔はめっちゃ怖かったのに。いい報告したいなと思っていたからできてよかった。自信にはなります」。レギュラーツアー初Vへ期待も高まる。