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<さよなら、ドン>

激動の2011年は、最後の最後にまたゴルフ界に衝撃が走った。“ドン”こと杉原輝雄さんが、74年の生涯に幕を閉じた。

前立腺ガンが見つかったのは、97年。しかし、「試合に出続けたい」と、手術を拒否して生涯現役にこだわり続けた不屈の闘志も、ついにリンパへの転移が発覚したのは一昨年の夏だった。
晩年は、報道陣に囲まれるたびに「僕もいつ死ぬかわからんよ」と、口癖にように言っていたのを思い出す。もちろん、半分は冗談めかして。そして、きっとその半分は、本気でその覚悟をして。

それでもなぜか、この人は死なないような気がしていた。いや、この世に死なない人などいないのだけど。死を覚悟しなければいけないほどの病いを抱えてもなお、「ドンは死なない」と、周囲に錯覚させてしまうような不思議な空気というか、計り知れないパワーをこの人は持っていたと思う。

70歳を超えてもトレードマークの長尺ドライバーを杖のようにして、時々ロープ際のファンを爆笑の渦に巻き込みながらひょこひょことコースを歩くその姿は一見、肩の力がほどよく抜けて、ツアー通算28勝を挙げて、永久シード入りした全盛期のような凄みはなかったかもしれないけれど、ゴルフに対する執念は、やっぱりずば抜けていた。

ガンのホルモン療法の影響で衰えがちな筋肉を補おうと、当時はまだそれほど知られてはいなかった加圧トレーニングをいちはやく取り入れたのもこの人だった。いくつ年を重ねてもなお老体をイジメ抜き、あまりの過酷さに悲鳴を上げて、脂汗を流しながらも歯を食いしばる姿は、同時に生きることへの執念とも重なる。
それが杉原さんに、不死鳥のようなイメージをもたらしていた。

ツアーのご意見番として、しばしば苦言を呈しながら、身を持って若手のお手本になろうとした。ティグラウンドに散らばったティペグやゴミを拾おうと、腰をかかげめて黙々と手を動かしていた姿が今も目に浮かぶ。

身長は160センチと小柄なのに、圧倒的な存在感があった。まさに「ニヤリ」といった風に浮かべる笑顔には、70歳を超えてもなお、いたずら小僧のようなみずみずしさがあった。あの笑顔も、もう二度と見られないのは本当に寂しい。

2006年のつるやオープンでの世界最年長の予選通過や、一昨年の中日クラウンズで達成した51回の同一大会連続出場の世界記録もさることながらその強烈な個性はまさに、記録より記憶に残る大選手だった。

80、90歳と長生きをして、プレー以外の面でももっと、ゴルフ界に貢献していただけることがあったのではないかと思うと、やっぱり残念でならない。その反面、勝負の場から姿を消されて1年で潔く旅立たれたことには、「これぞドン」という壮絶な生き様を、まざまざと見せてもらった気がする。「人に勇気を与えるという点で、杉原さんは一番だった」とのジャンボ尾崎の言葉が、心に染みる。青木功は「“おまえら頑張れよ”と杉原さんに言われている気がしている」と言った。もうあの雄姿が二度と見られないことにまだ現実味が持てないが、せめてそのご遺志を裏切らないようにしたいと思う。

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