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ツアー初優勝<矢野東> アサヒ緑健よみうり・麻生飯塚メモリアルオープン

2005/11/07 12:00

15番からの3連続バーディで大混戦を抜け出して、1打差首位で迎えた18番パー4。ピン左手前2メートルに残したパーパットのちょうど対角線上に、仲間の笑顔を見つけて泣きそうになった。
「俺は、今までいつも、あっち側にいた」。

2003年の川原希(ジョージア東海クラシック)、2004年の神山隆志(JCBクラシック仙台)、昨年の井上信(ABCチャンピオンシップ)。
仲間が初優勝をあげるたび、いつも率先して祝福に駆けつけたのが矢野だった。特に2003年12月の日本シリーズ。兄貴のように慕っている平塚哲二が、初優勝をあげたときだ。 その大会に、矢野は出場権がなかったにもかかわらず、最終日にコースに駆けつけ、真っ先に平塚の肩を抱いたものだ。

この数年間というもの、他人の優勝を自分のことのように喜んでいるうちに「いつの間にか、取り残されてた」。ふと気がつけば、仲間の中で自分だけが未勝利。
「いずれ自分も」の思いを強くして迎えたプロ6年目。いよいよ、自分の番がやってきた。

「みんな、見てろよ!」
そんな気持ちをこめてねじこんだパーパット。夢中で作ったガッツポーズ。グリーンサイドの仲間にもしっかりと見えるよう、何度も高々と振り上げた。ホールアウトして、平塚の腕の中に飛び込んだとき、再びこみ上げてきた涙。
「でも、いまはまだ泣けない。もし負けたら恥ずかしいから」。

ゲームはまだ、次の最終組のプレーを残していた。やはり練習仲間の川原希が1打差で、日大の先輩・片山晋呉は2打差で18番にやってくる。
懸命に涙をこらえ、集中力を切らさぬように、パッティンググリーンに向かったが落ち着かなかった。 ソワソワしてちっとも身が入らず「このまま、川原さんとプレーオフになったらきっと俺が負けてしまう」。 不安にかられた矢先、平塚らが大騒ぎで練習グリーンになだれ込んできた。

「東!! 勝ったぞ、お前が勝ちや!」。
川原も、片山も最終ホールでパーに終わったことを、知らせてくれたのだ。実感も沸かないままに、次々と差し出される手を握り返した。 いったん引き上げた18番グリーンに戻る道で、じわじわと喜びがこみ上げてきた。

「・・・ほんっとに、ほんっとに、嬉しいですっ!!」。
目を閉じて、さっき大雨を降らせたばかりの曇天を仰いだ矢野を、大ギャラリーの拍手が包んだ。

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