「本当に悔しい」あふれる涙、片岡大育がそれでも示した敗者の矜持
堪えていた涙が、堰を切ったようにあふれ出した。国内男子ツアー「中日クラウンズ」最終日、プレーオフの末にキム・キョンテ(韓国)に敗れた片岡大育は、クラブハウス2階に上がってテレビカメラを前にすると、笑顔の下に隠し続けていた悔しさが湧き出るのをとめられなかった。
「悔しいです。本当に悔しい」。ロッカーに戻っていったん感情を落ち着けたが、再び姿を見せたときも、まだ赤みがかった目には涙の滴が残っていた。「17番は左がダメなのは分かっていて、右手前を狙ったけど、全体的に左に行く悪い癖が出てしまった――」。
2打差の単独首位から出た最終日。3番でボギーを叩いてキムに並ばれ、7番で突き放されたが、そこから「必死に食らいついた」。9番ではバンカーから直接沈め、10番は2mを入れ返した。キムとともに2連続バーディとして、1打差で併走した。
15番(パー5)。3打目をグリーン奧に外した片岡の球は、左足下がりの難しいライに止まった。キムも「絶対ボギーだと思った」と振り返った状況から、片岡はグリーンエッジでワンクッションさせて、そのままトロトロとカップに沈めた。「本当にうまかった」とキムも脱帽のショットだった。
続く16番は、2打目をピン下2mにぴたりとつけて、カップ真ん中へ強めのバーディパットをぶち込んだ。残り2ホールで2打のリード。だからこそ、悔やんだのは17番(パー3)のティショットだ。「クラブが被って入ってしまった。まさかのダボだった」。7Iから放たれた球は、左へ出てさらに左へと巻いていき、カート道に止まってダブルボギーへと直結した。
プレーオフまでもつれたが、最後は1.5mのパーパットがカップ左をすり抜けた。「(右に)切れると思って、(カップを)チョイ外しで決め打ちした。絶対入ると思ったけど、外れました――」。
それでも、試合終了後はそのままチャリティサイン会場へと足を運んだ。隣の18番グリーンで行われた表彰式のざわめきを聞くともなく、笑顔でギャラリーたちに挨拶をした。声を掛ける関係者らに笑顔を返し、クラブハウス前で待ち受けるファンに丁寧にサインもした。片岡は立派な敗者であり続けた。(愛知県東郷町/今岡涼太)