小田孔明 狙うは最多勝での賞金王、そして「マスターズ」
「何でもいいから入ってくれ。手が動いてくれ」。緊迫した空気に包まれた最終18番グリーン上。1mのウィニングパットを沈めた小田孔明は、安堵の表情で右手を高々と突き上げた。
国内男子ツアー「ブリヂストンオープン」最終日。3打差リードの単独首位からスタートした小田は、パットに苦しみながらも5バーディ、2ボギー「68」(パー71)とし、通算15アンダーで今季2勝目。優勝賞金3,000万円を加算し、2位につけていた賞金ランキングでも藤田寛之を抜いてトップに返り咲いた。
「ショットは一流でも、パットが三流」。グリーン上でもがき続ける小田の背後に迫ってきたのは、スタート時に5打差をつけていた3組前の藤田だった。「気になっていたのでチェックしていた」というリーダーボードを見るたびに、藤田のスコアは伸びていく。14番グリーン脇のボードを見ると、通算13アンダーとした藤田に並ばれていた。「えっ?て。(ボードを)2回見直しましたよ。キャディと“これはヤバイ”って」。
「ここからやる気が出た」と気合いを注入。15番、16番と連続で伸ばした小田は、通算14アンダーでホールアウトした藤田を1打リード。しかし、17番(パー3)では1mのパーパットを外して痛恨のボギーとし、「あれは痛かった」。再び藤田と首位に並び、最終18番(パー5)のティグラウンドに立った。
ティショットはフェアウェイに運んだが、3Wで2オンを狙った2打目は風にも流されて大きくグリーン右へ。ピンまで30ヤード、ラフからバンカー越えの3打目。SWでロブ気味に上げたボールはピン手前1mに止まり、優勝を決めるバーディで締めくくった。「10回打って1回寄るかどうか。その1回が出て良かった」と自画自賛する会心の1打だった。
9月下旬「ダイヤモンドカップ」で今季3勝目を挙げた藤田に奪われたトップの座も、1カ月足らずで奪還。約590万円のリードをつけたが、「賞金では抜いたけど、まだ勝利数で負けている」と充足感はない。「狙っているのは賞金王と最多勝」と力強く宣言した。
そして、その先にある「最大の目標」は、未踏の地である「マスターズ」の舞台だ。最速で出場を決めるには、今年度末の世界ランキングで50位以内に入る必要がある。今週を前にしたランキングは68位。小田が勝利数にこだわる理由の1つは、そこにある。
「残りの試合は、ぜんぶ勝つつもりでやる」。国内ツアーも残すは6試合。賞金王と「マスターズ」に向けて、貪欲に勝利を求め続ける。(千葉県千葉市/塚田達也)