キム・ヒョンソン 黄色いシャツに込めた思い
1万2000人を超える大ギャラリーが詰めかけた国内男子ツアー「中日クラウンズ」の最終日、単独首位からスタートしたキム・ヒョンソン(韓国)が3バーディ1ボギーの「68」とスコアを伸ばし、後続に影を踏ませることなく逃げ切り優勝。「難しいイメージしかない」という和合で、ツアー3勝目をもぎ取った。
「本当に嬉しいですけど・・・」と優勝会見のヒョンソンはためらった。「今は船のこととか、地下鉄のこととか、韓国国民は嬉しい雰囲気じゃないから」と、素直に喜ぶことには抵抗があった。
最終日、ヒョンソンが袖を通したのは黄色いシャツ。韓国では今、“黄色いリボン”がフェリー事故の犠牲者を追悼するシンボルとなっている。リボンを用意できなかったというヒョンソンは、黄色いシャツに祖国への思いを込めた。
12番では「少し(地面に)刺さっていた」というグリーン右ラフから8ヤードのアプローチをSWでチップイン。ティショットが木の後ろに行き、なんとか4打で手前カラーまで運んだ15番では、10メートルをパターで沈めてパーセーブ。「本当に信じられない。説明が難しいけど、なにかありますね」。締めくくりは最終18番。「3打差あったし、ファンサービスみたいなつもりで強く打った」という11メートルのバーディパットも、スルスルとカップに消えた。
同組で回った石川遼は「ショットは僕より高いレベルでやっている。元はスライサーだったのが、今はドローに近いストレートを打っているし、飛距離も伸びて安定している」と技術の進歩を指摘する。「それに、パットもチップも全部入れてきたからあれはすごい。今日はヒョンソンの日だと思った」と、素直に脱帽するしかなかった。
今年序盤、「ソニーオープン」「WGCキャデラック選手権」と米国ツアーに参戦したヒョンソンは、「タイガーみたいなオーラを持った人がいなくて、あまり怖く感じなかった」と現地で世界との差は感じなかったという。「だから、自信がありますね」。
先週、「チューリッヒクラシック」で米国ツアー初優勝を飾ったノ・スンヨル(韓国)とは大の仲良し。優勝を祝うメールを送ると、「ヒョンソン先輩もアメリカに来たらすぐに勝てますよ」と返信されたと微笑んだ。「今年は賞金ランク1位が目標。それと世界ランク50位に入って、メジャーとWGCに出ることが目標です」。高い目標も、この日のヒョンソンに掛かればすぐに実現可能なことのように感じられた。(愛知県東郷町/今岡涼太)