2011年 中日クラウンズ

【GDO EYE】単独首位の岩田寛「もう2度としない。2度とキレない」

2011/04/29 18:06
キャディからの厳しい指摘に目を覚まされたという岩田寛

仙台市泉区に実家があり、仙台空港に停めていた自身の車も津波で流されたという岩田寛にとって、東日本大震災は今も続いている恐怖だ。「寝る前とか、試合が始まる前とかは結構考えますね」。4月7日、震災後最大となる震度6弱の余震が仙台を襲い、「凄く怖かった」と岩田は言う。「余震が来るたびにまたかって思うし、それ以上の怖い思いをしている人がいっぱいいるので。妹とか、泣きじゃくってたし・・・」。

俄然、ゴルフに対する意気込みも違ってくる。「重みがありますね」。想いを込めて、1打1打に集中する。「テレビに映って、見てくれた人が何か思ってくれればいいなって」。岩田は控え目にそう漏らした。

昨年、長年師事した江連忠氏の元を離れ、スイング改造に着手。これまでは下半身を積極的に使っていたが、「プレッシャーが掛かると曲がってしまう」と、右足への体重の載せ方を変え、体重移動を抑えることでミート率を向上させ、安定性をアップさせた。

「中日クラウンズ」初日は、好調なショットを武器にスコアを伸ばしたが、最終18番でお先に打ったショートパットを外してダブルボギー。本人はすぐに切り替えたつもりだったが、その後のパッティンググリーンでタッグを組んで4年目になる新岡隆三郎キャディに「いい加減にしてくれ」と詰問された。「僕がなんでお先にするかっていったら、素振りとかするのが面倒くさいからなんです。その“面倒くさい”って言葉に怒ったみたいで」。

「逃げてんだ」。新岡さんの言葉に岩田は打たれた。「真剣にやって外れるのを怖がってるだけだって言われて・・・」。思い返せば、開幕戦でも5パットや4パットを犯している。「もう2度としないです。2度とキレないです」。多分・・・、という言葉を付け足したが、それは岩田独特の照れ隠しなのだろう。この日から、短いパットもきっちりとマークをして、素振りをして打つというルーティンを取り入れた。

04年のデビュー以来、プロ入り8年目。今年30歳になった岩田は優勝に届きそうになりながら、未だ勝ち星には恵まれていない。「今年勝たなかったら、一生ただの人だと思ってやっています」。寡黙な男の決意表明が、会見場に静かに響いた。(編集部:今岡涼太)

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