【GDOEYE】もっと聞きたかったスーパールーキーの“声”
兵庫県の山の原ゴルフクラブ 山の原コースで行われた「つるやオープンゴルフトーナメント」。近藤共弘の優勝で幕を閉じた国内男子ツアー第2戦で、日本ツアー1年目の黄重坤(ハン・ジュンゴン)が通算10アンダーの15位タイに入る活躍を見せた。
黒縁メガネにキャップ姿の黄は、韓国出身の18歳。2009年に母国のプロテストをトップで突破した若手のホープだ。プロ1年目の昨季は韓国ツアーでシードを取ることができず、「レベルアップを目指して」年末の日本ツアーのQTを5位で通過。今季前半戦のほとんどの試合の出場権を獲得している。
精度の高いアイアンショットで初日トップタイに立ち、2日目は後退したものの単独3位で決勝ラウンドに進出。「いったい誰?」。リーダーズボードに並ぶ選手名を目で追うギャラリーにも、そんな空気が漂い始めていた。
しかし今大会、残念ながらそのルーキーの勇姿をなかなかお伝えできなかった。申し訳ない限りだが、そこには言葉の壁があったと言わざるを得ない。まだ18歳という若い才能にメディアは興味津々。だがその言葉は十分にこちらに届かなかった。ゴルフ界では通常、大会側や主催者サイドが通訳の方を用意することは稀で、現状、日本語があまり理解できない黄との会話が、なかなか成り立たないのだ。
初日はS・K・ホが通訳を買って出てくれたが、黄にとってホは母国の大先輩とあってインタビュー中、恐縮しきり。翌2日目はキャディを務める父の炳元(ビョンウン)さんが、精いっぱいの日本語で息子の思いを伝えてくれたが、どこかたどたどしく、申し訳ないけれど“満足いく”取材時間になったとはいえなかった。
これが野球やサッカーといったプロのチームスポーツなら考えられないことだが、ゴルフは確かに自己責任のスポーツで、それはコース外でもそうなのだろう。ただ、メディア対応は“問題”の一端に過ぎない。プレー中、トラブル時に競技委員を呼んで処置を決める場合は、どうするんだろう、とも思う。そしてこの最終日は「73」と後退したが、もしも優勝していたらインタビューだけでなく、スポンサーや関係者に対し満足に感謝の意を伝えることができただろうか、とも思う。
ここ数年、男女、そして国内外を問わずゴルフ界で「韓流ブーム」が巻き起こっているのは誰もが知るところ。世界最高峰の米国ツアーなどでは、もちろんそんな通訳のサービスは無く、多くの選手が言葉の壁を一度は経験する。けれど海外ツアーで英語が“公用語”とされている現状や、日本ツアーでの韓国勢が占める割合、そして強さを考えれば、それは比較にならないだろう。
昨季、国内男子ツアーでは金庚泰が韓国人初の賞金王に輝いた。それも一つのきっかけに、ツアー全体のプロモーション活動の一つとして、どうにか“デキル”通訳さんが現れてはくれないだろうか。自分の語学力の無さに忸怩たる思いを抱えながら、そんなことを考えていた。(編集部・桂川洋一)