「遊びじゃないから」谷口徹56歳のあふれる涙と抱える未練
◇国内男子◇カシオワールドオープン 2日目(22日)◇Kochi黒潮CC(高知)◇7350yd(パー72)◇晴れ(観衆1927人)
5年前の高知で、ホールアウト後の谷口徹は人目もはばからず涙を流した。22年間続けて保持してきた賞金シードを喪失した「カシオワールドオープン」の会場で悔しさのあまり号泣。そして今年は2018年の国内メジャー「日本プロ」優勝で得た5年シードを手放し、またタオルで顔を覆った。
「最近、涙腺が壊れたんですかね」と苦笑いする目から、とめどなく涙があふれ出る。13試合に出場した今季の予選通過は2回だけ。賞金ランキングは来季シード獲得となる65位に遠く及ばない153位でも、シニア入りして久しい56歳でも、本気度は昔と変わらない。「体はどこも痛くない。(サポート)チームのおかげだと思う。でも、結果が全てのスポーツだから」と、ただシーズンを完走しただけは喜べなかった。
来季の限定的な出場資格を争う最終予選会(ファイナルQT/12月3日開幕、山口・下関ゴールデンGC)には出ないつもり。来季以降もキャリアで一度だけ使える「生涯獲得賞金上位25位以内」の資格で出場が可能だが、行使するかを迷っている。
資格適用の申請期限は年度内で「今すぐは答えられない。考えます」と話した。「ぜいたくな悩みかもしれないですけど、試合に出るためだけにやっているわけじゃないんで」と思うからだ。ツアー通算20勝の名手はずっと「遊びじゃない。やっぱり勝つためにやってきた」
2018年からは、シニアツアーにも身を置く。19年にはメジャーの「日本シニアオープン」を制した。藤田寛之や片山晋呉、宮本勝昌らもシニア世代となったが、谷口にとってレギュラーツアーは今も「楽しいというか、真剣に、必死になれる」場所にほかならない。
「そんなところってあまりないじゃないですか。本気でやらないといけない。自分へのプレッシャーもきつい。(昔と)同じようなトレーニングは確かに厳しい。でも、やっぱり自分の中でここが一番好きなところ。人生で一番長い時間を過ごしてきたところ」。勝負師としての信念は真っすぐなままだ。(高知県芸西村/桂川洋一)