棄権のピンチから2位発進 木下稜介「本当に奇跡みたいなラウンド」
◇国内男子◇三井住友VISA太平洋マスターズ 初日(7日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262yd(パー70)◇晴れ(観衆4030人)
ボギーなしの5バーディ「65」には、木下稜介自身が一番ビックリした。「完走するのを目標にしていたんですけど。本当に奇跡みたいなラウンドだった」。痛めた股関節をかばいながら、とにかく18ホールを回り切ることに必死だった。
月曜のトレーニングで左股関節の筋を痛め、開幕前日のプロアマは「申し訳ないけど」と9ホールを回ったところでやめていた。この日も朝の練習では棄権する選択肢も頭にあったが、「なんとかクラブは振れる状態だった」と痛み止めを服用してティオフ。特にドライバーショットで左足を踏み込むと痛みが強まり、「ほとんど右プッシュのミス」とこの日のフェアウェイキープ率は50%(70位)。ティショットに苦戦したが、好調なパッティングでスコアを作った。
スタート10番で4m前後のバーディパットを決め切ると、15番で3m、18番(パー5)も4mを入れて3バーディ。11番、後半6番は3、4mのパーパットが残るピンチとなったが、1パットで入れて崩れなかった。痛みと向き合いながらの18ホールは、終わってみれば首位と1打差の好発進。「痛いなーと思いながら回っていたので、緊張も一切なく。逆にそれが良かったのかな」と振り返る。今週は特に気合を入れてきた分、けがに向き合うことで冷静になれた部分もあった。
「残り4試合で優勝して、賞金王になりたい」。現在賞金ランクは3位で、1位の平田憲聖とは約2733万円差となっている。加えて、本大会終了後の賞金ランク1位に与えられる、米ツアーへのチャンスを狙う気持ちが強い。11月13日付のランキング1位には、12月12日からの来季PGAツアー出場をかけた最終予選会(フロリダ州TPCソーグラス)出場資格が付与される。チャンスをつかむには、今週の優勝しか残されていない。「この痛みでちょっとつらい部分はあったけど、きょう良いプレーができた。あしたも痛みと付き合いながら頑張りたい」と力を込めた。(静岡県御殿場市/谷口愛純)