“チーピン”帳消しのリカバリー 岩崎亜久竜の海外再挑戦に頼もしい優勝副賞
◇国内男子◇ANAオープン 最終日(15日)◇札幌GC 輪厚C(北海道)◇7066yd(パー72)◇曇り(観衆3532人)
勝負所での痛恨ミスに苦笑いが浮かんだ。単独トップで迎えた最終18番、ティショットは本人もビックリの派手な“チーピン”だった。「やっちゃったーと思って。ショックでした」。前日までの不安定さから、前半9ホールは一度も握らなかった1Wを振り切った瞬間に左の林へ。ボギー以上なら逆転負けがちらつくシーンで、岩崎亜久竜は底力を発揮した。
ラフの中でアドレスをとると、2本の木のあいだが1mほど開いている。ピンまで208yd。「練習場で低いドローを打つだけ」と気持ちを固め、5Iでスペースを打ち抜いた。球は狙い通りグリーン右手前のラフに到達。1パットパーを拾い、鮮やかな逆転勝ちに繋げた。
大混戦の最終日、3位スタートの岩崎は1番バーディの後、2番の2打目をグリーン右奥に外してダブルボギーを叩いた。後手に回りそうになった展開で、湯本開史キャディと目指したのが、1994年に尾崎将司が残した大会記録の通算20アンダー。「あれ以上いけば勝てる。30年も塗り替えられていないんだから」
97年生まれのコンビは生誕前のレコードを頼りに輪厚に再挑戦。「それからは最終組の方のプレーを気にせずにポジティブに、守りに入らないようになった」。5Wで2オンに成功した12番(パー5)のイーグルを含む「66」。見事20アンダーにのせ、昨年10月「日本オープン」でツアー初優勝を飾ってから続いた不振に、ケリをつける2勝目をもぎ取った。
一昨年に賞金ランキング3位で終え、昨年参戦したDPワールドツアー(欧州ツアー)で苦戦した。PGAツアーでプレーしたい「小さい頃からの夢」は変わっていない。今季開幕前のオフ、フロリダ州オーランドにある松山英樹の自宅に“居候”した。恵まれた練習環境をフルに活用して毎日、打ち込み。3月「アーノルド・パーマー招待」の直前、会場のベイヒルクラブ&ロッジでのプレーと試合観戦の機会に恵まれた。
世界のトップレベルと自分との「差がスゴイ」と痛感した。「試合の2週前の状態でもコースは本当にタフで、ちょっとのミスでいくつ打つのか…という難しいセッティング。その中で(PGAツアーの選手は)あれだけ良いプレーをしている。自分は頑張らないといけない」。克服すべきことを挙げればキリがない。「ティショットの精度、球筋のコントロール、スピンコントロール、ショートアイアン、微妙な距離のコントロール、パット…」
将来的な予選会参加が視野にある。今大会の優勝副賞がなんとも心強い。全日本空輸から恒例の国際線ファーストクラス・ペア往復航空券を手に入れた。「トレーナーを連れて万全の態勢で臨みたい。まだビジネスクラスまでしか乗ったことがないので楽しみです!」。最後は心の底から笑えた。(北海道北広島市/桂川洋一)