2024年 日本プロ

「この人には勝てない」から2年弱 杉浦悠太が“完敗”の国内メジャーからリベンジ

2024/07/07 17:38
杉浦悠太は蝉川泰果(右)とのマッチレースを制してプロ初勝利を挙げた

◇国内メジャー第2戦◇日本プロゴルフ選手権大会 最終日(7日)◇富士カントリー可児C志野C(岐阜)◇7201yd(パー72)◇晴れ(観衆4491人)

およそ2年前、同じ国内メジャーの舞台で「この人には勝てない」と確かに思った。2022年の「日本オープン」3日目。最終組の1つ前でともにアマチュアとしてティオフした杉浦悠太はその日大きく引き離され、翌日にナショナルオープン制覇を遂げた蝉川泰果の姿を忘れていない。その背中を追うように昨年11月、「ダンロップフェニックス」で史上7人目のアマ優勝。プロ転向して迎えた「日本プロ」で、今度はたくましく勝ってみせた。

スタート時の蝉川とのリードは、最後まで守り抜いた。前半で1つスコアを落とすことになった、折り返し9番のボギーが好転のきっかけだったという。第1打を左隣の18番に曲げ、2打目も同じホールを伝って3オン2パット。必死のボギーに「きょうはパットが打ち切れていなかったが、(パーパットで)上りの10mをしっかり打てたので、『後半行けそうだな』という気持ちになった」と守りに入らなかった。

10番で蝉川に1打差に詰められても怯まず、杉浦は12番(パー5)で3m弱のチャンスをものにして逃げた。最終18番、第1打を左サイドのアゴの高いバンカーに入れてから、4打目は花道からのアプローチ。手前のピンに対して「パターやロングアイアンで打つ選択を、ナショナルチームに入ってからしていた」と、今週安定していたパターでピンそば1m以内に寄せ、ボギーで「72」。通算18アンダーでビッグタイトルを勝ち取った。

先輩プロたちから手荒い祝福

プロ転向後12試合目での「日本プロ」制覇は、2009年大会を16戦目で制した池田勇太の最速記録を更新(詳細記録の残る1985年以降)。22歳にしてツアー2勝目を飾り「ホッとした部分が大きい」と語る。「ダンロップフェニックスのときは自分に優勝できる力があることがうれしかった。今回で『早くプロとして1勝を』と言われなくなります」

ピンチの場面も冷静沈着。「めちゃくちゃテンパってるんですけど(笑)、あまり表には出ないのかな。テンパっても次に集中して、良い選択ができるように意識しています」。杉浦のプロ初勝利をアシストする前、2019年から5年間にわたって谷口徹のバッグを担いだ高田侑佑キャディは言う。「強い谷口さんは戦場で平気な顔をして向かっていくタイプだと思っていました。悠太くんは常にフラットで、攻められても動じない」。爆発力を備えたオールラウンダー。淡々とした立ち振る舞いの影には、揺るがない強い精神力がある。

実質的なプロ1年目のことしはアジアンツアーからシーズンをスタートさせた。同世代のトップ選手たちと同様、視線は海の向こうにある。「海外に行きたいと思っているので複数年(5年)シードはうれしい。ことしは賞金王を目指して頑張っています」。出身の愛知県のお隣・岐阜県の会場には連日、暑さに負けない応援の声が響いた。“故郷”でのビッグタイトルを世界への足掛かりにする。(岐阜県可児市/桂川洋一)

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