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岩手県勢初優勝 苦しんだ逸材・米澤蓮は「ゴルフでも勇気を」故郷に届ける

◇国内男子◇中日クラウンズ 最終日(5日)◇名古屋GC和合C(愛知)◇6557yd(パー70)◇晴れ(観衆6233人)

絶好のウィニングパットを前に視界が揺らぐ。首位タイで迎えた最終18番、1.5mのバーディチャンス。プロ転向から2年目の昨季まで、グリーン上で苦労してきた日々が頭によぎった。「絶対に決めて、今までの苦しみを払しょくしてやる」。上りのラインを伝ったボールがカップのど真ん中から消える。24歳の米澤蓮にとって「ゴルフ人生で一番気持ち良かったシーン」が訪れた。

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3年目のシーズンで舞い込んだ初勝利の機会。首位に2打差の3位から最終組を回り、序盤2番(パー5)のバーディをきっかけに最終日を引っ張った。後半10番までの5バーディは怖いもの知らずの積極性の証しのようで、堅実なプレースタイルを貫いただけ。隣の片岡尚之に14番で1打リードを許しても、ゲームプランを崩そうとしなかった。

スコアを伸ばしたい15番は2オンが可能なパー5。同組2人が1Wを握ったのを横目に、米澤は淡々とアイアン型UTをバッグから引き抜いた。左ドッグレッグ、左からの風。フェードヒッターには不都合な状況で無理をしない。「戦略を崩してミスをしたら納得できない」とパーを許容し、上がり3ホールの勝負と決めていた。6バーディ1ボギーの「65」、通算13アンダーには、試合巧者らしい緻密なマネジメントを完遂する強さがあった。

ホールアウト後、クラブハウスで待っていてくれた先輩を見て、「やっと優勝した実感が湧いてきた」と言った。東北福祉大、ナショナルチームで寝食を共にした1学年上の金谷拓実の背中を追ってきた。2018年に金谷、中島啓太今野大喜とアジア大会の団体金メダルを20年ぶりに日本に持ち帰った。プロ入り後に相次いだ同世代の活躍に「焦りがなかったと言えばウソになる」と、もがいていたのが本音だった。

その姿を先輩たちが見過ごすはずがない。金谷こそが「本当によく練習する。『もっと、もっと』と上を目指す気持ちでやっている一人」と米澤の勝ちを待っていた。そしてタイトルを争った同大学OBの片岡も「ホントにいいヤツです。結構クールですけど、心に熱いものを持っている」と後輩の高い技術はもとより、闘争心を早くから認めていた。

岩手県出身選手として昨年初めてシードを獲得し、初勝利も手にした。メジャーリーガーの大谷翔平選手らを輩出した同県(花巻市)に今も住む。「本人にお会いしたことはないが、ああいう存在を目指して野球をしている子どもが、僕が普段練習しているところの周りにいっぱいいる。同じようにとはいかないけれど、自分もゴルフで勇気を届けたい」

試合や合宿で南半球に幾度となく飛び、キャディやコーチとのやり取りに必要な英会話を学生時代から意識高く学んでいるのは、将来の海外進出のため。「シーズン序盤で勝てたのはうれしい。これからの長期的な計画もすごく立てやすくなった」。続々と日本を飛び出す新世代。次の候補に名乗り出た。(愛知県東郷町/桂川洋一)

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