“神業イーグル”の近藤智弘「プロが褒めてくれるチップイン」
◇国内男子◇ACNチャンピオンシップ ゴルフトーナメント 3日目(7日)◇三甲GCジャパンコース(兵庫)◇7295yd(パー72)◇晴れ(観衆1452人)
近藤智弘が芝の薄い花道で、59度ウェッジを大きく開いた。20yd先のピンへ。柔らかく、しかし、思い切って繰り出したロブのようなアプローチは17yd先に落ち、静かに転がり、コトリとカップに消えた。
7番パー5で生まれた“神業”のようなイーグル。「完璧以上のアプローチ。100点。プロが褒めてくれるアプローチでした」。46歳の大ベテランが興奮気味だ。
「手前から転がる選択肢はありました。でも、グリーンエッジ付近が受けていて、その先が下ってるから“よらないな”と思って。それではダメだから、ワンクッショ入れるのは止めて、グリーン面に直接落とそうと思ったんです。ある意味でギャンブル、勝負球でした」。本当にプロに褒められた。同組のリュー・ヒョヌ(韓国)が手を差し出し、今平周吾はグータッチを求めてきた。
ただ、そんな劇的なシーンに厳しい裏話がある。「昨日から背中がちょっと痛くて」。7番のティショットを打った瞬間には「ピリッときた」という。実際、イーグル奪取に沸くギャラリーに右手を挙げて応えた後、グリーンサイドでしゃがんで腰を伸ばし、立ち上がって両手を頭上で組んで大きく伸びをした。
この1週間で急激に秋めいた天気、冷え込んだ空気、気まぐれで強い北風。5月「ゴルフパートナーPRO-AMトーナメント」後に腰痛で4カ月リタイアした体は、限界に近づいている。
なんとか「72」でまとめた。1イーグル2バーディ、4ボギーのパープレーで通算11アンダーとしのいだ。「本当に“今日、体がもつかな”という感じでした。不安でした。でも、今日さえ乗り切ったら、あと1日だし、それなら何とでもなるでしょうし」
最終日に2打差逆転劇に挑む。勝てば、2014年「HEIWA・PGMチャンピオンシップ」以来、実に「8年333日」ぶりのツアー通算7勝目。国内ツアーでは歴代8位の「ブランク優勝」だ。
「体調を整えて、とにかく思い切りのいいショットをどれだけ打てるか」。経験を積み、キャリアを重ねた反面、失ってきた「思い切りの良さ」を取り戻したい。残り18ホールであと何打、あのアプローチのような“ギャンブルショット”が打てるのか。増えれば増えた分、逆転Vが見えてくる。(兵庫県三木市/加藤裕一)