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最高のパートナーと初V ビンセント夫妻の“馴れ初め”と旅路

◇国内男子◇Sansan KBCオーガスタゴルフトーナメント 最終日(29日)◇芥屋GC(福岡)◇7210yd(パー72)

1mもないウィニングパットはとてつもなく長く思えた。ボールをカップに収め、顔を上げると愛妻の声が響いた。「I’m proud of you.(あなたは私の誇り)」。南アフリカ、カナダ、アジアを経て辿り着いた夫婦の旅は、ここ日本でついに結実した。

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母国ジンバブエの英雄、メジャー通算3勝のニック・プライスの育成プログラム出身のスコット・ビンセントは高校卒業後、米バージニア工科大で腕を磨いた。在学中、観戦に訪れたサッカー部の試合で“一目惚れ”した相手が1つ年下のケルシーさん。アイスランドでプロ経験もあるフットボーラーだった。

2017年に結婚。翌週の試合から「離れて過ごすのも寂しい」とキャディに起用し、世界各地を巡る二人旅をスタートさせた。ケルシーさんにゴルフ経験はなく、今でもクラブを握ろうとしないが、いつしか残り距離の計算やパッティングのライン読みを担当するように。「僕を落ち着かせて、プレーに集中させてくれる。本当に心強い存在」と公私のパートナー関係は深まっていった。

19年に日本ツアーに本格参戦し、同年6月の下部AbemaTVツアー「LANDIC CHALLENGE 7」で、キャリアにおける世界ランクポイント対象試合で初優勝を飾った。会場はこの芥屋GCだった。

2年後の今年、週の初めにはあの時と同じ、担々麺を食べて試合に臨むと初日からトップを快走。最終日は折り返しの9番(パー5)で第1打を左の林に曲げながらバーディを奪って勢いを殺さなかった。最終18番(パー5)も左のがけ下から2打目を放つピンチを脱し、「いつものルーティンを守ることだけ考えた」とパーパットを沈めて、石川遼を1打差で振り切った。

今月ジンバブエ代表として出場した「東京五輪」で16位。同国で今年オリンピアンになったのは他に陸上で1人、競泳2人、ボート種目で1人だけだ。「あまりない時間のなかで、みんなに日本のことを話したんだ。特別な体験だった」と一瞬一瞬を胸に刻んだ。

本格参戦3年目での待望の1勝は29歳にとって次へのステップ。海を渡り続けるのは「いつかはPGAツアーに行きたい」から。愛妻の母国に、次の夢がある。(福岡県糸島市/桂川洋一)

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