「マスターズに連れていってよ」木下稜介と奥嶋誠昭コーチの約束
◇国内男子◇ダンロップ・スリクソン福島オープン 最終日(27日)◇グランディ那須白河ゴルフクラブ (福島)◇6961yd(パー72)
「言えることは、奥嶋さんがキャディじゃなかったら勝ててないと思います。距離も全部僕が測って、キャディ業は微妙でしたけど(笑)、終わってからのコーチングが4日間の安心材料になった」。初優勝から間髪入れずに2勝目を飾った木下稜介は、今週初めてキャディに起用した奥嶋誠昭コーチへの感謝を口にした。
初日57位タイと出遅れたのは31パットを要したグリーン上が要因。スピードに合わせられず「パターを替えようかと思った」と振り返るが、徐々にアジャスト。「2日目に良くなって、3日目にさらに良くなって、最終日が一番良かった」。2番(パー3)、3番と続けて10mほどのロングパットを沈めたのを皮切りに、好調なショットと見事にかみ合った。
序盤の苦戦にも理由があった。奥嶋氏が「ストロークを変えていたんです」と明かす。念頭にあったのは7月の海外メジャー「全英オープン」(イングランド・ロイヤルセントジョージズGC)。稲見萌寧のキャディとして昨年「全英女子オープン」を体験し、「全英に行ったりすると、今日よりもうちょっとグリーンが重いときもあると思う。やっておかなきゃいけないんじゃないかって」。初日の停滞に揺れ動く選手の背中を押し、取り組みを貫いたことで徐々に形になっていった。
いまでは全幅の信頼を寄せられるが、「最初のころは、あんまり信用されてなかったんじゃないかな。“試されてる感”が強かった」と笑う。転機は昨年11月「三井住友VISA太平洋マスターズ」。初日36位だった木下から「ポッと、突然連絡が来た」。助言がはまり、2位に入った。
これまで木下は指導を受け始めた時期を「昨年後半」と話してきた。奥嶋氏によると、実際にやり取りが始まったのは「一昨年の後半」。2人の間にある“ズレ”は、信頼関係が出来上がったタイミングにも重なる。お互いを理解し、オフの間にしっかりと合宿を行えたことで持ち味のショット精度に磨きがかかり、2021年のブレークにつながっている。
「マスターズ、連れて行ってよ。キャディもやるよ」。恩人のリクエストに木下は「ヤダ!」といたずらっぽく笑って返した。「コーチとして、来ればいいじゃん」。2勝目をつかんだ2人の目標は、もっともっと先にある。(福島県西郷村/亀山泰宏)