昨年12月の「日本シリーズJTカップ」。選手たちは留学前の古橋さん（中央下段）を囲んで記念撮影（提供写真）

新型コロナウイルス感染の拡大防止策について各国で対応が分かれる中、ニュージーランドは政府の迅速な対応で早期封じ込めに成功した国として認知されている。昨年まで日本ゴルフツアー機構（JGTO）の広報担当として活躍した古橋みづきさん（27）は今年から同国オークランドに留学。まだ2カ月半ながら激動といえる新生活をレポートしてくれた。

■3月はハプニングの連続

ロックダウン中のオークランド市街。ニュージーランドは優れた新型コロナウイルス対策を行った国のひとつだ（提供写真）

古橋さんがニュージーランドに到着したのは2月末のこと。当時はコロナに対する恐怖は日本のほうが広く叫ばれていたように思う。閑散とした成田空港からオークランドでスムースに入国したあと、日本ツアーも公認するアジアンツアー「ニュージーランドオープン」が行われたクイーンズタウンにギャラリーのひとりとして向かい、会場ではかつて同じ“職場”だった選手たちから労いの言葉をかけられた。

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ハプニングに見舞われたのはちょうどそのとき。留学先のオークランドで最初に宿泊する予定だったお宅の家主から、ウイルス感染への心配を理由に滞在を拒否する連絡が入った。突然降りかかった災難に頭を抱えたが、気持ちは理解できなくもない。民泊仲介のAirbnbでなんとかシェアハウスの部屋を確保し、予想外の出費をいきなり抱えることになった。

3月16日から学校がスタート。2日前に本格的なホームステイも始まっていた。国内の情勢はそこから急変した。同20日、一緒に入学した日本人の多くが自主隔離を余儀なくされ、通学を禁じられた。古橋さんは準備（そしてプロゴルフ観戦）のために14日間以上前に入国していたことが奏功し通学を許可された。ところが23日、ジャシンダ・アーダーン首相は26日（25日午後11時59分）には警戒レベルを3から4に引き上げ、都市封鎖を行うことを発表した。「23日の授業中に政府からのアラートが入りました。授業はすぐにストップ。みんな町に買い出しに出て。とりあえず私はシャンプーを買いましたが…」

実は4月半ばに次の引っ越しを控えていた。ロックダウン中に問題なく転居できるかは疑わしい。そのため、猛スピードで荷造りをして25日の日中に急きょ移動。すぐに学校のオンライン授業も開始され、慌ただしいことこの上ない日々を過ごした。

■女性首相のリーダーシップ

スーパーマーケット入店に並ぶ人もソーシャルディスタンスを守っていた（提供写真）

死者が出る前に踏み切った約1カ月のロックダウンの最中は、外出は病院や薬局、スーパーマーケットのほかは軽い運動に制限され、街頭では警官が見回りを行った。ゴルフ場、街中の練習場もクローズ。古橋さんはかつて明大ゴルフ部に在籍したゴルファー。今平周吾、堀川未来夢と同学年でもある。「クラブを握りたくて…家で素振りをしていました。SNSで見た、SWでリフティングからポケットに入れるチャレンジにも挑戦しました。“テイク5”で成功しました」

人口約495万人のニュージーランドでの感染者数は1499人（死者21人）と少ない。そのうち1433人が回復した（5月18日現在）。4月27日に段階的に緩和が始まり、飲食店はテイクアウト対応が許可され、古橋さんはさっそくマクドナルドに車を走らせたという。「ビッグマックがあんなにおいしく感じられたのは初めてでした（笑）。ゴルフ場もメンバー限定で営業を再開したところもあるそうです」

そして5月14日、警戒レベルは2になった。町の美容院は人が列をなし、飲食店もソーシャルディスタンスを意識した座席レイアウトに変えて営業を再開。「週末には友だちとレストランに行こうと思います。6月には学校も始まります」。冬支度が始まった南半球の都市は、日常を取り戻しつつある。

2018年に世界で初めて産休を取得した現役首相として知られたアーダーン首相の形容詞は、未曽有の事態に打ち勝った女性リーダーに変貌を遂げた。「騒動が始まって、毎日午後1時に首相が会見を行い、状況がアップデートしています。ニュージーランドの人々にとっては日々の恒例番組のひとつになっていました。対策への決断力に感謝しています」と古橋さん。再開の目途が立っていない日本ツアーの様子も気になる。「早くツアーが始まって、みなさんが活躍している姿を観るのが楽しみです。遠い場所からひっそり応援しています」と海の向こうでリスタートを楽しみにしている。

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