女子プロトーク

大ダフリして合格

2024/10/05 05:00
インターFMラジオの収録現場にて(右から佐藤靖子、タケ小山)

体育はいつもオール5。運動神経抜群の少女だった佐藤靖子は、中学から始めたソフトテニスに青春のすべてを捧げた。高校を卒業する頃にはソフトテニス強豪大学からいくつか推薦も来ていたが、「テニスの経験を生かしてゴルフをしてみるのはどうだ?」という父の提案から”軽い気持ち”で名門葛城ゴルフ倶楽部の研修生に応募した。ゴルフ経験は父と気分転換で一緒に行った打ちっぱなし程度で、まともに18ホールをラウンドしたことはなかった。当時は研修生になるための試験として、30cm幅の人工マットの上に置いたボールを打つ実技があった。受験生にはジュニアから競技を経験しているゴルファーが多数いて「これは私落ちちゃうなぁ」と実力の違いを受け入れるしかなかった。まだクラブをまともに振れなかった佐藤は打席に入り、無我夢中で渾身(こんしん)のフルスイングを披露した。結果、マットの手前20㎝を大ダフリしボールではなく人工マットをはるか遠くに飛ばした。「やってしまった…..」。不合格を覚悟したが、支配人だった寺下郁夫プロからは「合格!」と告げられた。ソフトテニスで培っていた強じんな身体から繰り出したフルスイングが魅力的に映ったのだろう。


こうして研修生からプロを目指す道を歩み始めた18歳の佐藤だが、2年後のプロテストに一発合格することはまだ知る由もなかった。最速でプロになり最速でシードを獲得するものの、初優勝まで22年かかった半生を、4回にわたってお届けする。