女子プロトーク

ダンボール工場のプロゴルファー

2024/09/14 05:00
当時の苦労を振り返る前田陽子

プロゴルファーになってすぐの頃、前田陽子の姿はゴルフ場ではなくダンボール工場にあった。母の紹介で、大王製紙の子会社でダンボールを梱包する工場で仕事をしていた。当時は所属先もなく、試合で掛かる費用は全て自身でねん出しなければならなかった。試合で良い結果を出せなければ食べていけない、あらためて自分がいるプロの世界の厳しさを痛感した。平日は朝から夕方まで工場で働いた後、練習場に行って球を打つ。休日はゴルフ場でキャディをして終わった後にバッグを担いでコースをラウンドした。金銭的な理由で試合出場を見送ったことも何度かあった。「このままで大丈夫か」という焦りと「絶対にこの状況から抜け出してやる」というハングリーさが自然と備わっていった。


転機は急に訪れる。2013年のQT(クオリファイング・トーナメント)で13位に入り、ツアーフル参戦の権利を獲得した。ずっと働いてきた大王製紙からも「我々も応援したい」と年間サポートの話をもらえた。悔しい思いをたくさんしてきた分、訪れたチャンスを全力でつかみとった。そして迎えた2014年11月の「伊藤園レディス」でプロ初優勝を達成する。ダンボール工場で仕事を始めてから、6年の歳月が経っていた。