<堀江×川淵3>アジアマーケットの拡大力を狙え!
川淵三郎氏vs.堀江貴文氏 対談その3
【堀江貴文氏(以下、堀江)】日本のJリーグって、アジアでは圧倒的に整備されているし、すそ野も広い。この間、FC今治とSVホルン(注:オーストリア2部リーグ)の試合を見に行ったんですよ。今治は四国リーグだから、いってみれば1部、2部…の5部ですよね?
【川淵三郎氏(以下、川淵)】そうだね。
【堀江】練習試合だけど、その5部のチームがオーストリアの2部のチームと1部のチーム(注:ザンクトペルテン)に連勝したんです。5部のチームが、一応オーストリアの1部のチームに勝つわけだから、それはそれだけすそ野が広い。
たぶんJの問題はトップチームが中国リーグのチームに負けているとかいうことだけで、そこを強化しようとして2000億円とかいう契約を持ってこようとしているわけです。そこはアリババ(注:中国のネット通販最大手で、世界最大の流通企業。中国1部リーグの広州恒大の株主)のカネに勝たないといけないわけだから。広州恒大だけで予算が200~300億円あって、浦和レッズが60億円ないくらいだから…。そういう話なんですよ。
【川淵】うん。
【堀江】プロスポーツはグローバル競争の時代になっている。そういう意味では、サッカーのアジア向けのマーケティングってギリギリなんですよ。経済レベルが上がってきているから。プレミアリーグがすごい攻勢を仕掛けてみんなサッカー好きになって、タイ人がプレミアリーグのオーナー(注:岡崎慎司が所属し昨季優勝したレスター・シティを所有)になったりして、最近はタイリーグも少し盛り上がってきている。タイ代表のトップ選手とかは、もう日本に来ないですよ。来てもJ2でもプレーできなかったりするんだけど。
本当は日本って、アジアの選手を、昔のカズさん(注:三浦知良/1994年にイタリア、98年にクロアチアでプレー)とかの時代に日本人Jリーガーがヨーロッパへ行ったみたいに、高年俸で「こいつに3000万円払うの?」みたいな選手を雇うべきだと思う。アジアのために。ずっとベンチにいるかもしれないけど。
【川淵】いや、それはね、見ていたら絶対プラスになるね。今ね、ベトナムの選手が水戸にいるでしょ(注:グエン・コン・フォン/2016年に水戸ホーリーホックに期限付き移籍)。ベトナムでもJリーグが放送されていてね、やっぱり自国の選手がそこのリーグで活躍しているのはみんな見たいからね。東南アジアの選手を入れた方が得なんだよ。
【堀江】日本人の年俸の2倍とか3倍を払ってもいい。そうじゃないと来ないよ。タイリーグの年俸とかすごく上がっているから、タイでいいじゃんって。だって自国だし、知らない国に行ってベンチにいるより、弱いかもしれないけど、自国でレギュラーでプレーして年俸も良いしって思う。その意味でJリーグはギリギリのところで頑張っている。
【川淵】そうだね。
【堀江】ゴルフでも、アジアンツアーをなめていたら、いつの間にか日本ツアーよりも規模が大きくなりつつあるよねって。でも、日本のゴルフのすそ野は、やっぱり競技人口や試合数や歴史や伝統を考えるとアジアでナンバーワンなんですよ。
だから、ネットをメーンにして動画のサブスクライバー(注:定期購読者)を取りたいと思っている放映権の管理会社と年間100億円を超える大型契約を結ぶのは、僕は無理じゃないと思うんです。要は売ればいい。日本のテレビ局との契約をすべてやめて、いまJリーグの交渉を行っている会社と交渉すればいい。ただ、そのためには組織を変えないとダメ。やる人がいないと。川淵さんにやっていただければ…。
【川淵】いや、堀江さんに昔みたいに儲けてもらって、放映権を買ってもらうのが一番いい方法ですよ(笑)
【堀江】頑張ります(苦笑)。昔の会社だったら全然やっていましたけどね。「まるごと買うか!」って。
【川淵】それくらいのことはやったね。
【堀江】それくらいのことはできたでしょうね。それだけゴルフのポテンシャルはあると思うんですよ。
(続く)
(取材構成/編集部・今岡涼太)